揃ってバイクに跨った同期コンビ。

今の2人なら何も心配いらないと満足気な表情を見せると、スズは敵にバレないよう静かに移動を開始する。

この階にも事前にピックアップしておいた避難場所があるので、そこへ向かおうというわけだ。

しかし天使の動きに人一倍鋭いあの男が、それを黙って見過ごすはずはなく…


「あっ!スズ、どこ行くんだよ!」

「ちょ、四季…!大きい声出さないで…!」

「矢颪、あっちにバイク回せ!」

「おぅ」


敵にバレるとワタワタしているスズを他所に、あっという間に彼女の前までバイクで乗りつけた2人。

傍から見れば、不良たちに絡まれている女子の図だ。

乗って!乗らない!と押し問答を繰り広げる一ノ瀬とスズの横で、矢颪は何故か静かだった。

そして不意に言葉を発する。


「…さっきの嘘だったのか?」

「え?」

「いつでも傍にいるって、言ってくれただろ?俺を1人にしないって」

「碇…」

「…昨日の夜、スズが鬼國隊の奴らといろいろ話してんの聞いててさ…俺、何も分かんなかったんだ。

 生け捕り命令とか、桃に狙われてる理由とか…あいつらより長く一緒にいたはずなのに、知らないことばっかだった」

「それは、私が言ってなかったから…」

「違う。俺がスズと会話しようとしなかったからだ。自分のことも、スズのことも…

 だから、傍にいるって言ってくれた時すげぇ嬉しかった。一緒にいたら、たくさん話できるだろうなって思ったから。

 俺…スズのこともっと知りたい」

「!」

「知った上で、スズの力になりてぇ。…もし聞いてくれんなら…俺の話も、たくさんしたい」


俯いたまま言葉を紡ぐ矢颪の姿に堪らなくなったスズは、バイクに跨っている彼にギュッと抱きついた。

突然のことに目を見開く男2人に構わず、スズは穏やかな声と笑顔で話し始める。


「私は、ずっと前からそうしたいって思ってたよ?碇とたくさん話して、お互いのこと知って、仲良くなりたかった」

「スズ…」

「だからゆっくりお話しよ!お菓子とか食べながら」

「…俺の話も、聞いてくれんのか?」

「もちろん!質問攻めにするから、覚悟しといてよ?」

「おう!」


明るくそう返事をした矢颪は、自然とスズの背中に手を回していた。

目の前で想い人とイチャイチャしている同期の背中に一ノ瀬がグーパンを入れることで、場は一旦収束に向かうのだった。


------
----
--


先程のやり取りで、スズが他の場所に避難するという選択肢は完全に消えた。

だが一緒にバイクに乗ると言っても、物理的に不可能なのでは…とスズは2人に問いただす。


「そんなことねぇって!俺と矢颪の間に乗れる!」

「いや、無理だよ!碇、運転しにくいよね?」

「俺の運転なめんなよ?余裕だわ」

「違う違う!気合いでどうにかなる問題じゃないから!」

「まぁまぁ!物は試しっつうじゃん?1回座ってみてさ、ダメそうなら降りればいいじゃん!」

「えー…」


男2人の強気な姿勢と言葉に促され、スズは渋々彼らの間に体を滑り込ませる。

大型バイク故に何とか座ることはできたが、窮屈なことに変わりはない。

"これで分かったでしょ?"と降りようとするスズを背後からギュッと抱き締めると、一ノ瀬は声を上げる。


「よし!矢颪、出せ!!」

「えっ!?ちょっと!」

「おっしゃ!四季、ちゃんとスズのこと支えとけよ!」

「分かってるわ!」


作戦成功とばかりに、やんちゃな笑顔を見せる一ノ瀬と矢颪。

スズの制止も聞かず、運転手はトップスピードでバイクを発進させた。



- 142 -

*前次#


ページ:

第1章 目次へ

第2章 目次へ

第3章 目次へ

第4章 目次へ

第5章 目次へ

第6章 目次へ

短編 目次へ

章選択画面へ

home