「だからか…」
「ん?」
「さっき"一応"って言ってたから気になってたんダ。でもそれサ…もし妖と出くわしたらどうするの?」
「体術は教えてもらってるんだけど、でも強い妖が来たら…やられちゃうかな。だから迅猫が優しい子で良かったよ…!」
"いや〜本当良かった良かった"と明るく笑うスズ。
彼女が作り出した花冠を見つめながら、迅猫は静かに口を開く。
「……ボクが守ってあげようカ?」
「へ?」
「ここで笛の練習する間だけ。隣に座っててあげル」
「いいの…?自分で言うのもあれだけど笛は下手だし、お礼も大したことできないよ?」
「お礼なんていらないヨ。ボクはスズの横でただ昼寝してるだけだカラ」
「ありがとう!じゃあせめてもの気持ちで、たくさんお菓子持ってくるね!」
「ふっ。食べきれる量にしてよネ?」
こうして秘密の約束ができた2人。
練習をする時は、丘の麓にある大木の枝にシロツメクサの花冠をかけておくのを合図にしようと決めたのだった。
それからというもの、スズはほぼ毎日笛を背負って丘へと向かった。
大木に花冠をかければ、5分と経たないうちに迅猫がやって来た。
スズが笛を吹いている横で、彼女が生み出したたくさんのお菓子を美味しそうに頬張る用心棒。
日を追うごとに、2人の距離は近くなっていった。
「今のはいい感じに吹けたんじゃナイ?」
「やっぱりそう思う!?」
「うん。聞いてたら眠くなってきたヨ」
「ふふっ。一番嬉しい褒め言葉かも!ありがとう」
ふわっと笑うスズを見つめていた迅猫は、不意に彼女の膝に頭を乗せる。
そして慌てる女子に構わず、その名の通り猫のように丸まって目を閉じた。
「ちょ、迅猫!?きゅ、急にどうしたの…!」
「言ったでショ。眠くなったの」
「いつもは私の横で寝てるじゃん!」
「…今日はここがいい」
「きょ、今日だけだからね!でも…」
「ん?」
「迅猫って、こうしてると本当に猫みたい」
穏やかにそう言ったスズは、優しく迅猫の頭を撫でた。
その気持ち良さに、彼の意識はゆっくりと落ちていくのだった。
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そんな日々が10日ほど続いたある日。
笛もだいぶ上達したということで、スズは今日で練習は最後にすると迅猫に伝えた。
「短い間だったけど、本当にありがとう!迅猫のお陰で毎日安心して練習できたよ」
「こちらこそありがとう。お菓子美味しかっタ」
「…でね、お礼って言ったら大袈裟なんだけど、1つ迅猫に渡したいものがあるんだ」
照れ臭そうなスズが取り出したのは、自身の術式で作った組紐だった。
迅猫の服装から着想を得て作られたそれは、中華っぽく赤を基調とした中に金色を散りばめてある。
本人の自信のなさとは裏腹に、スズが作った組紐は実に美しいものであった。
「…スズが作ったの?」
「う、うん。結構長めに作ったから、あの、荷物まとめる時とかに使ってもらえたら…」
スズが言い終わる前に、迅猫は組紐を自分の腰へ回しキュッと結んだ。
筋肉質だが引き締まった腰から、さりげなく紐が揺れる。
そのために作られたのかと思うほど、長さも色味も彼にピッタリだった。
「丈夫そうだし、ここにつけても平気でショ?」
「それはもちろん、平気だけど…身につけてくれるの?」
「当たり前。こんなに綺麗な組紐、ボク初めて見たヨ。ありがとう、大事にするネ」
「うん!」
嬉しそうにしているスズに、一歩近づく迅猫。
そして彼女の首元に頭を寄せてスリスリと動かした。
くすぐったさと恥ずかしさで真っ赤になるスズを、迅猫は愛おしそうに見つめるのだった。
「また練習する時は合図出してネ。どこにいても飛んでくるカラ」
「ありがとう!それまでケガとかしないでね」
「好的」
こうして1人の陰陽師と妖に繋がりができた。
まさかこの2人があんな再会をするなんて…
誰が想像できるだろうか。
続
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