小鳥のさえずりと差し込む柔らかな朝陽に、スズはゆっくりと目を開ける。

ゴロンと寝返りを打てば、肘をついたままこちらを見つめる文月がいた。


「ひっ…!」

「朝からそんな大きな声を出すな」

「いつから起きてたの…?」

「一刻前ぐらいか」

「起こしてよ!恥ずかしいじゃん…!」

「確かに阿呆のような顔で寝ていたな」

「気抜いてるんだからしょうがないでしょ…!」

「…他の奴には見せるなよ」


そう言った文月は、照れ臭そうにしているスズの頬を優しく撫でる。

言葉の裏にある想いには、ワタワタしている幼馴染はもちろん、言った本人ですら気づいてはいないようだった。





第3話 黒城の主





スズが落ち着くのを待って、2人は身支度を整えるために動き出す。

この後、例の幼き半妖・嵐丸との面会が控えているのだ。

寝間着から着替えるだけでいい文月と違い、スズは一度湯浴みを挟みたいところ。

だがガバッと立ち上がったのも束の間、彼女はまた敷布の上に正座状態になる。


「ん?どうした。湯浴みに行くのだろ?」

「うん…そう、なんだけど…」

「一緒に入って欲しいのか?」

「ち、違うよ!そうじゃなくて…あの、お説教…」


スズが俯きながらボソッと呟いたその単語に、口角を上げる文月。

幼馴染のこういう変なところで真面目な部分が、彼は嫌いではなかった。

黙ったまま目の前に胡坐をかいて座った文月の次の言葉を、スズは緊張しながら待った。


「スズのおてんばぶりは、長い付き合いでよく知っておる」

「うっ…」

「活発に動き回るのは良い。お前の自由を奪うつもりは毛頭ないからな」

「…」

「だが…怪我は許さぬ」

「はい…」

「…お前が倒れている姿を見て、久しぶりに血の気が引いた」

「!」

「スズのいない日々などつまらぬ」

「文月…」

「お前はずっと俺の傍にいれば良いのだ。隣で阿呆のような顔で寝ていれば良い。分かったな?」

「しょ、しょうがないな〜私がいないと文月は何もできないんだから〜」


不意に見せた文月の穏やかな表情に心臓がうるさくなる。

それを隠すように茶化したスズだったが、その頭を文月にガシッと掴まれ睨まれてしまう。


「痛い痛い痛い!冗談だから!ちゃんと傍にいる!傍で…文月のこと支えさせて?」

「! …それ以外の選択肢はない」


そう言ってプイと横を向く城主様を、スズは微笑ましく見つめる。

共に過ごしていた時間の長さ故、不器用なところも似てしまう2人なのであった。


------
----
--


一足先に支度を整えた文月は、スズが湯浴みをしている間に…と動き始める。

友人だと言っていた相手に自分が伝えようとしていることは、決して良い内容ではない。

いないうちに済ませた方が、彼女を悪者にしなくて済むと判断してのことだった。

広い和室の上座に座り、脇息きょうそくに肘を置きながら待っていると…

前夜の衣のまま、恐怖を顔に貼りつけた幼き半妖を連れて白露が入って来た。

ポスンと下座に座らせられた嵐丸に対し、城主は静かに口を開く。


「余は花山文月。この城の城主である。童、早速で済まぬが…今からお前の首を貰う」



- 5 -

*前次#


ページ:

第1章 目次へ

章選択画面へ

home