「白露、目隠しありがとう!…うわ〜また派手にやったね」

「もう少し威力を抑えてもいいと思うけどな」

「お前達うるさいぞ」

「文月!お疲れ様。腕は…平気?」

「あぁ、問題ない。…よし、白露。神器を探せ」

「…この肉片の中からか?」

「(こ…殺した…こんな簡単に…あっ!)」

「嵐丸?どうした?」

「(こいつら…この石を取り合ってこんな…)いや、何でもねぇ!」

「童。ソレをこちらに渡せ」


そう言われ、手に持っていた勾玉を文月へ渡そうとする嵐丸。

だが次の瞬間…

勾玉が光ったかと思えば、フワフワと浮かび嵐丸の額へ吸い込まれていったのだ。

直後に気を失った半妖の元へ駆け寄った文月の目の前で、勾玉は完全に額の中へと消えてしまった。


「文月、どうなったの…?」

「……神器が…取り込まれた…」

「! その子供がやったのか?」

「…わからぬ。スズ、この童から何か聞いてるか?」

「ううん、何も。特殊な力があるようには思えなかったけど…」

「…確かに見たところ、ただのタヌキの半妖のようだが…殺すのか?」

「そんな…!」

「…ひとまず城へ帰る。スズ、余の首に手を回せ」

「えっ!いいよ、もう歩けるから!」

「なら歩いてみろ」

「……い"っ!」

「今までは札の効果で一時的に症状が軽くなっていただけだ。分かったら言うことを聞け」

「はい…」


自分が歩くどころか立つことさえままならない状態だと思い知らされ、スズはまたシュンとした表情を見せる。

そして、勝ち誇ったように腕を広げて待っている文月に体を預けるのだった。

軽々とスズを持ち上げた文月は、同じように嵐丸を抱えた白露を後ろに伴い帰途についた。


「ごめんね。体疲れてるのに…」

「大した重さではない。何も持ってないのと変わらぬ」

「ふふっ。ありがとう」

「いろいろあったからお前の方が疲れたであろう。寝ていて良い」

「…珍しく文月が優しい」

「腕を外して、振り落としてもいいんだが?」

「嘘!ごめんなさい!…お言葉に甘えちゃうかもしれないけど、本当にいいの?」

「構わぬ。俺の部屋に着いたら起こすから、早く寝た方が良いぞ」

「えっ?」

「説教だと言っただろ。…俺が忘れてると思ったか?」


そう言ってフッと笑いかけてくる文月に、スズは自分から変な汗が出るのを感じた。

だがそれも束の間…

安心する体温と匂い、そして心地よい揺れの中で、黒城の紅一点は穏やかな寝息を立て始めた。


「スズは寝たのか?」

「あぁ。随分長い散歩になったからな」


白露に言葉を返す文月の表情は、後ろから見えないからか、滅多に見せないとても優しげなものだった。



夜半過ぎ頃に黒城へと戻って来た文月達一行。

幼き半妖を白露に任せ、城主はスズを抱きかかえたまま自室へと向かった。

自分のために準備されていた絹の敷布の上にそっと寝かせると、右腕部分が破かれた自身の着物を布団代わりにかける。

道中での言葉とは裏腹に、スズを起こすようなことはせず、気持ち良さそうに眠る彼女を静かに見守る文月。

そして頭を優しく撫でてから、身支度を整えるため一度部屋を出るのだった。


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どれぐらい眠っただろう…

疲れと痛みの両方が軽くなってきた頃、スズの意識はゆっくりと覚醒した。

心地よい温度と香りに包まれた、実に気持ちの良い目覚めであった。

と、不意に顔を少し動かした時、その理由を知ることになる。


「(! 文月!?え、ちょ、どういうこと!?)」


顔を向けた先、つまりすぐ隣に城主が眠っていたのだ。

おまけに腕と脚のどちらも自身に絡められており、軽く拘束されている状況であった。

眠る前の会話を思い出すに、ここは恐らく文月の部屋であろうと察しがつく。

ということは、自分の寝相が悪く彼の布団に潜り込んでしまったのか?

そう思い少し顔を奥へ向ければ、そこには1組の寝床があり、抜け出した後のように掛け布団代わりの着物が乱れていた。

つまり総合的に考えると…


「(私じゃなくて、文月がこっちの布団に入ってきた…?)」


彼はこんなに寝相が悪かっただろうか。

昔からの付き合いだが、今までそんな話は聞いたことがなかった。

何はともあれ、夜が明けるまでのあと数時間、こんな状態ではドキドキして眠れるわけがない。

文月を起こさないよう脱出し、もう1組の布団で眠るしかないとスズは判断した。

しかしいざ動こうとすると、本当に寝ているのか疑いたくなるほどの力の強さに驚きを隠せない。


「(え、これ寝てるんだよね?全然動かないんだけど…!)」

「……スズ、あまり動くな…」

「ご、ごめん、起こして…でもあの、この状況はどういう…」

「…たまには良いであろう」

「そういうことじゃ、なくて…あ!ほら、私お風呂入ってないし、あまり近づかない方が…」

「案ずるな。俺がこの世で一番安心する匂いだ」

「そ、そんないい匂いじゃ「嫌な夢を見た…」

「!」

「…1人で眠ると、見ることが多い…でもスズの傍にいると……安心するから…」

「文月…」

「だから…今日はこのまま…」

「うん…!」


スズの言葉に、文月は眠そうながらも少し笑みを見せた。

そしてさらに強くスズを抱き寄せると、彼女のことも寝せるようにポンポンと背中を叩く。

その一定のリズムが再びスズの睡魔を呼び寄せ、2人は揃って深い眠りに落ちていった。







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