"今ならまだ追いつける"
そう信じて広間を速足で出て行ったスズ。
彼女の不在に男性陣が気づいたのは、それから数分後のことであった。
「ねぇ、スズもいなくなっちゃったんだけど…」
「「!」」
「この流れだと…当然追いかけて行ったよね」
出雲の言葉に、文月と白露はその光景を容易に想像できた。
脱走した嵐丸、それを追いかけたスズ、目の前に立ちはだかる妖2体…
山積みの課題に城主は1つ大きな息を吐く。
「言うことを聞かぬ者ばかりだな」
自分もその中の1人なのだが、まるで他人事のように文月は静かに言葉を漏らした。
第4話 猪の強襲
「"印"の札?」
「あぁ。童の体に忍ばせておいた。余であれば後を追える」
「スズの方は?」
「ここと童を結んだ線上にいるはずだ。札を追えばすぐに見つかる」
「もし線から外れてたらどうするんです?」
「問題ない。スズのいる場所は…本能的に分かる」
「わ〜愛が重いね、主。…でも絶対無傷で連れて帰ってきてください。スズがいないと寂しいから」
「分かっておる。…白露」
「!」
「そういうわけだ。余は先に行く。妖を片づけたらすぐに来るのだぞ」
出雲との会話がひと区切りつくと、白露へそう指示を出す文月。
対応を丸投げされ不満げな相棒を無視し、彼は城を出て行った。
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一方のスズはといえば…
とりあえず城の前に広がる森に入り、一番近くにある村へ向けて足を進めた。
草むらの中や木の上などに目を凝らしながら、幼き半妖の名前を呼び続ける。
しかし結果は芳しくなく…小さな姿はどこにも見当たらなかった。
と、不意に前方から聞こえてくる2つの声。
"伴猟"・"旺猟の兄貴"と呼び合う彼らは仲良さげにこちらへと歩いてくる。
1人は文月達と変わらない背丈だったが、もう1人を見た瞬間スズはすぐに茂みの中に身を隠した。
大きいという言葉だけでは言い表せないほどの体格と、手に持っている特大金づちのような武器。
「(あれは人じゃない…てことは一緒にいるのも妖…)」
ご存じの通り、スズに妖を倒す力はない。
人間の相手でもやっとの彼女にとって、あの2体の妖との接触は命取りだ。
気配を消してやり過ごそうと待機するスズだったが、妖たちは一向にやって来ない。
恐る恐る顔を出せば、小さい方の妖が道を逸れ、奥の方へと入って行ったのが見えた。
当然のようにあの巨体の妖も後を追い、どちらもスズの視界から一旦いなくなった。
「(あっちに何か…はっ!嵐丸を狙って…とかないよね?)」
神器は妖を惹きつける。
それは昨夜の一件で目の当たりにしている。
何らかの方法で嵐丸の神器を探知し、襲いに行った可能性は十分に考えられた。
スズはすぐさま術式で伝令用の折り鶴と筆を出し、文月の元へと飛ばした。
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