瞼の裏の星空

ガイ
3/4


「お二人の声はとても大きくてよく聞こえますね」
 薄暗がりのなかからずるりと這い出るように現れたのはメルトティアートだった。落ち着いた雰囲気を携え、穏やかな口ぶりで話す。この彼はまだおとなしい方の彼だ。語り部である彼はこういうとき、とても心地の良い存在となる。
「ふむ。ところで二人とも、今が何時かわかるかね?」
 唐突に繰り出された質問にメルトティアートもミトも困惑の表情を見せた。
 少なくとも私の記憶が正しければこちらの世界に来て百八十年以上が経つ。正確な時間など覚えているものが果たしているだろうか。
「ここは常闇……時間の概念などあるのでしょうか」
「同感だ。唐突にどうした? ガイ」
 疑念が入り混じった二つの視線を真に受けながらニヤリと笑った。少なくとも私は笑ったつもりだ。そして右手の人差し指を立て、今度は得意げな表情をしてみる。伝わっているかどうかはわからない。
「トイ=テン=フェルによって向こうの世界で眠らされた時。その時間帯はおおよそ午後三時だった。次に目を覚ました時にはもう、この世界にいたわけだが……そこで真っ先に私は時間が気になったのだよ。果たして今は何時だろうか? とね。だからリークイドに聞いたのさ」
 一呼吸おく。
「君は今どれくらい腹が減っている? と」
 私の声に合わさるようにリークイドがもぞもぞと動き出した。地面に滴り落ちているリークイドの一部が増加する。
「向こうの世界で私はリークイドに規則正しい生活をさせていた。一日3食、決まった時間に決まった食事。つまりリークイドの空腹具合でどれほど時間が経ったのかおおよそわかるのだよ」
「うーん、それはどうなんだろうね」
 ミトが右手を挙手して何かを言いかける。慌ててそれを制止した。
「まぁいいから聞きたまえ、ミトくん。細かいことなんて気にしてはいけないのさ」
「それで……リークイドはどれほど腹をすかせていたのでしょう」
「ああ、すまないねメルトティアートくん。こちらへ来てとにかくものを食べさせた。その量を目分量ではかったから正確ではない、と前置きしておこう。だってしょうがないだろう? ここには何もないからね。……彼は五食分もの肉や内臓をたんまりと食べたのさ。その勢いったらもうすごかったね」
「なるほど。五食ということは少なくとも一日以上経っていたということか」
「その通りだ、ミトくん! 食事をさせる時間は九時、十五時、二十一時だ。ちょうど食事のあとに眠らされ、こちらへ送り込まれたおかげで計算がとにかく楽になったのだとも! その点、トイ=テン=フェルには感謝してるよ」

この辺りからあんまり読まなくていい感じ。
ミトリヒさん(@hakabakasii)
メルトティアートさん(@Kina_mochi)
prev  return  next