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基本詠唱を唱えた。今の所、今日はまだどの魔物にもエンカウントしていないが森の中に入れば必ず何かしら出会うだろう。
一人でいる時はどうかミラージュが現れないでほしいと願った。恐怖を感じるものは山ほどある。そのどれに擬態されてもきっと俺は動けなくなるだろう。
ガサガサと音がする。次の瞬間目の前に現れたのは、俺の姿をした魔物だった。マネルだろう。
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出現した偽の俺の足元にある土を動かす。水か何かのように滑らかに動いた土は、瞬時に偽の俺の姿を飲み込んだ。手のひらをぎゅっと握ると、土の中で人間の体が潰れる音がした。
存外あっさりと倒せてしまったことに驚きながらも土を元に戻す。中から出てきたのは俺の死に顔……ではなく、黄色い猿の姿だった。
なるほど、こういう風に出てくるのか。静かに合掌してその場を立ち去る。
……誰かいる。とっさに振り返ると、そこには三人ほど俺の姿が佇んでいた。正面に体を戻すとそこにはまた三人の俺。なるほど、挟み撃ちか。マネルに知能があるとは聞いていないし、殺意も感じられないがここで放置するわけにはいかない。
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両側の背後から土を盛り上げらせる。俺の姿を埋めつくさんばかりの影を作ったその土から一気に魔力を抜いた。それなりの重さのある土が全六体にかかる。戸惑ったまま避けようと動いた個体も逃がすつもりはなかった。
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突如地面がなくなり、一瞬空中で静止したかのように見えたマネルたちが重なって穴に落ちる。
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限界まで硬くした、形はいびつな土の塊を同時に二つの穴に落とした。潰れる音、悲鳴、唸り声。全部の音が耳を襲った。何も感じないといえば嘘になる。だからできる限り、死ぬ姿は見ない。まるでいつかの俺の暗示のように思えてしまうから。
にしても数が多い。ところどころで戦闘音も聞こえるし、かなりの数のマネルやミラージュがこの森の中にいるのだろう。
ここで食い止めているからいいものの、ここにいる魔物が全て村や街に降りていけば食料がなくなるどころか内戦が起こることもあるだろう。俺もできる限りマネルを殺していこう。森の奥へと急ぐ。