打開策



「僕にもう一回強化かけて。焼け野原にしてやる」
 いい加減苛立ちが募っていた。何回焼けば、何回突き刺せばこいつらはいなくなるのか。疲労よりも苛立ちが増す。アルのそばに戻り、そう告げるとアルは苦笑して僕の肩に手を置いた。
「二回以上の強化はあまりオススメしません、茉紘は体力も少ないですし」
「うるさい。こんなのいつまでも続けてたらそれこそ僕の体力もなくなるっつの!」
 勢い込んでいうとアルは観念したように僕の背中に手を置いた。
 僕の魔力は、生まれた時ほとんどなかった。僕の体は鬼火から生まれている。各国のお偉いさんの依頼で暗殺を繰り返す忍鬼の種族として、暗殺のためだけに体は作られた。魔力を持てば多少使える人にすぐ気配を察知されてしまうから、僕たちの"親"は魔力を与えなかった。この体が"親"の魔力でつなぎとめられているというのに。
 テトイに入って百年以上、ようやく僕は自分の中でそれなりに魔力を蓄えてきた。でもまだ足りない。こんなんじゃダメだ。僕はもっと魔力を蓄えて、隠せなくなるくらいの魔力を蓄えたら忍鬼をやめる。
 アルの強化魔法が背中を通じて体の中に流れ出す。溢れ出た魔力が鬼火となって体のあちこちから出現した。
「あー、やばい。これ、爆発する」
「それは……。さすがに私のシールドでも茉紘の魔力は防ぎきれません」
 アルの物理防御力は高い。そもそもが機械でできた体だからちょっとやそっとじゃ壊れないが、さらに特殊コーティングがなされているらしい。その代わり、魔法防御力はからっきしだ。彼女が魔力を幕状に張り出したシールドなら、彼女の魔力なりの防御はつかめるがそれも低いのだ。
「人のいる場所はわかってる? 魔力で固めた炎だから木には燃え移らないと思うけど」
「ええ、わかっています」
「オッケー」
 体の中からはじき出された鬼火で近づくマネルたちを燃やしながら一つ、熱も魔力も圧縮した爆弾を作る。火だけで作るそれは少しでも酸素に触れればすぐに爆発するだろう。周りを無属性魔法でコーティングし、なんとか遮断する。その間アルは背後から迫るマネルを一体一体斬り殺していた。
「アル、仕組みはわかってるよね?」
「はい」
「離れれば離れるほどこのコーティングは薄くなる。じわじわ爆発させても意味ないし、やっぱり近くでやらなきゃ無理かも」
 瞬間的な威力でその空間にいるマネルを殺しきる。漏れがあった時はもう、下にいる生徒に任せるしかない。これ以上ここで耐久しても結局、もっとたくさんのマネルが森を出てしまうだろう。
 自分の魔力で作られた爆弾ではあるが、これに当たれば僕もアルもきっとタダではすまない。軽くて全身やけど、重くて死亡といったところだろうか。僕もアルもこんなところで死にたいわけじゃない。ていうか、ただ数の暴力で殴られてるだけで死ぬとかダサすぎる。
「準備はいい?」
「いつでも」
「またカウントで行く。全力で逃げるよ」
 アルが斧を背中に戻し。僕の体を横抱きに抱えた。お姫様抱っこくらいしてほしいものだが、逃げるためだから仕方ない。アルが走り出す。
「三」
 僕の爆弾はその空間の中央に浮かんでいる。

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