陽動



「俺とお前の魔法で一箇所に誘導する。どれくらいの範囲なら今のやつできるんだ?」
 レイがえらく便利な魔法を使用しているのを見てすぐに横に飛んだ。こいつはやたら俺のことを敵対視しているが、できるならこの場だけでも協力したい。あいつの足場は悔しいくらい正確に俺の行く先に現れる。それと同時に範囲魔法を使うなんて、やっぱり魔力の差が目に見えていて尊敬と悔しさを同時に感じた。
「……この場所の半分ほど。この場にある土の量からして最大火力が出せるのはその程度だ」
「半分か……一度に全部は厳しいな。単純に量として入んねえ」
 俺の言葉にレイが頷く。こうして話している間も徐々にマネルは増えてきていた。その場を埋め尽くしている奴らをさらに半分の敷地内に納めろなんて無理に決まってる。二、三回に分けなくちゃならないだろう。
「策がある。が、時間がかかる」
 たったそれだけの言葉でもこいつの言いたいことはわかる。つまり時間を稼げ、というのだ。任せろ、とニヤリ笑ってみせるとレイは目を伏せた。
 こいつは一体俺に何の因縁があるというのだろう。義理の従兄弟、という全く血縁関係のない仲ではあるが、それ以上でもそれ以下でもないのだ。俺はこいつに何かしたわけでもないし、逆にこいつが俺に何かしたわけでもない。
 いい。頭を使うのは苦手だ。どうせなら全部あいつに投げよう。あいつが時間を稼げというなら俺は動いてやる。この場を切り抜けるため、この場にいるマネルを全員殺すためだ。目的は、一致している。
 走り出す。広範囲魔法のための準備をしているにもかかわらず足場はしっかりとついてきた。こういうところがムカつく。俺が嫌いなら助けなきゃいいのに。
 足場の上でバランスをとりながら駆け抜ける。土は生きているように俺の足に張り付いてきていた。一匹のマネルに狙いを定め、跳ぶ。振りかぶった鉄パイプを手のひらでくるっと回転させ、両手で頭に突き刺す。嫌な音が響いたが気にしていられない。腕で体重を支えながら、逆手に持ち替えて両脇のマネルの顔を蹴り飛ばした。背後に吹っ飛んだ二体のマネルの、右側へ引っこ抜いた鉄パイプを叩きつける。足場が足元に滑り込み落下する体が持ち上げられた。
 もう片方、先ほど蹴り飛ばした方の首を左手で掴む。爪を食い込ませながら力任せに締め、持ち上げてから地面に叩きつける。これで死んだ。次、右から迫るマネルの脛を鉄パイプで裏手に打ち砕いた。前のめりに倒れこむマネルの頭を左手の拳で殴る。数本の骨が折れただろう、すぐに絶命するはずだ。
「おい、レイまだかよ!」
「いや……もう、できてる」
 あ? と声を発する前に俺の足場が急上昇した。無意識に俺を追っていたマネルたちがその足場の下に集まっていく。急に上にあがったせいで足元がふらつき、思わず落ちそうになった。
Pioggiove il suolo雨垂れ土を穿つ」 
 レイの詠唱が聞こえた。その途端足元に集まっていたマネルたちの足元の土が、消える。

prev top next