後悔とともに


「アルミリア!」
 一つ一つの攻撃が重すぎる。初動は早く、次々と攻撃が繰り出されていく。四人で戦っていい相手じゃない。すぐに動けなかったクオリアを守るように立ちはだかったアルミリアはその体ごと吹き飛ばされた。呆然としていたクオリアもすぐ動こうと体を這いつくばらせている。
Torreggiante muro di terra聳え立つ土の壁
 レイは動揺で攻撃の幅が狭まっている。ひとまずクオリアを守るために土壁を形成したものの、吹き飛ばされたアルミリアの保護にまで気が回っていないようだ。どうすればいい。逃げなきゃ。四人じゃ歯が立たない。僕の火力では燃やし尽くせない。クオリアは足がなければただの魔法が苦手な人間だ。レイは相性が悪い。アルミリアも魔力を使い過ぎてる。どうすればいい。どうすればここから全員逃げられる? 
Coagulare il nostro signore凝固せよ我が主Les ciao giuその身を降らせ
 レイが申し訳程度に土を降らせる。大きさはそれなりなものの、強度は間に合っていない。ゾンビドラゴンに当たると同時に崩れていくのがほとんどだった。
「無駄に魔力を消費しないの! もう少し落ち着きなさい!」
「……、わかってる! 動けるか、クオリア」
「クッソ、なんとか……! アル、大丈夫か!」
 立ち上がったクオリアの足は震えている。どうしてこんなとき、僕の炎は麻痺を直せないのだろう。アルミリアは持っていた斧を握りしめ、杖代わりにして後方で立っていた。ところどころ彼女の肌は裂け、中から機械部分が覗いている。
「不利すぎる。どうにかして逃げるよ。レイ、アンタはアルミリアとクオリアを浮かして。僕はアイツの気をひく」
 太ももからクナイを取り出した。両手に持ち、構える。炎を体の周りに出現させる。エネルギーは今一番僕が多い。来い、僕を見ろ。僕に注目していればそのうちに三人が逃げられる。
Pioggiove il suolo雨垂れ土を穿つ
 え?
Gubbie della terra土の檻
 聞こえた詠唱は紛れもなくゾンビドラゴンへ向かっていた。後方でふらついていたアルミリアらしき手が背中に当たった。レイの詠唱により、ゾンビドラゴンの足元は崩れそこから巨大な檻が出現した。
「クオリア、無理をしてください」
「わーってるよ」
 アルミリアが軽々と投げた斧の持ち手をクオリアがパシッと掴む。右手にはいつも通りの鉄パイプが、左手にはアルミリアの斧が。
「ちょ、何してるの? 逃げろっつったでしょ! 四人じゃ無理! クオリア、アンタの足じゃゾンビドラゴンの早さには追いつけない」
「私が支援します。他人を浮かせるほどの魔力はありますから」
「アルだってもうほとんど魔力ないでしょ!」
「茉紘。ごちゃごちゃ言ってる暇はない」
「アンタも馬鹿なの? あんな巨大な檻、持つわけないじゃん……!」
 ゾンビドラゴンはその間もなおのこと土の檻へ体当たりを続けている。レイの額には驚くほど汗が滲み、魔力を維持している手は痙攣していた。
 ここで倒さなくたって、もしかしたら他のチームが遭遇してくれるかもしれない。何も四人でやる必要なんてない。しかも真価を発揮できない四人で。僕たちは僕たちのできることをすればいい。ただ生き残れば、それでいいはずなのに。どうして僕が生かそうとするのを邪魔するんだろう。僕は誰にも死んでほしくないのだ。
「クオリア。制限時間は五分もない。やるだろ」
「ったりめーだろ」
「……やめて。死ににいかないで。お願いだから、死ににいかないで」
 炎が揺れた。カウントダウンはもう、始まっている。