湖の中に囚われた大切な人を助け出すという課題が終わった、ハリー・ポッターはその勇敢さでロン・ウィーズリーとボーバトンのフラー・デラクールの妹を助け出し順位があがった。
「ポッターはいいご身分だな不正をしたのに今や英雄気取りだ」
談話室にそんな会話が響く、言っている人物はもちろんマルフォイだ。意気揚々と作ってばらまいていたバッジはもう誰も向けていない。なんだかんだでみんなセドリック・ディゴリーとハリー・ポッターを応援していた。それと関係あるのか無いのか、スネイプ教授の機嫌が最近一層悪い。今まで殆どスリザリン生には当たらなかったのに最近じゃ減点こそされないものの、よく怒られる。葛葉もその1人だった。
「貴様は何時になったら真面目にスリザリン生としての自覚が生まれるのだ?」
とりあえずこの状況を打破しようと葛葉の口からでる謝罪の言葉。これでも大人になった方かもしれない、昔はあからさまに嫌な顔になってもっとスネイプ教授の期限を損ねていたから。結局謝罪の言葉に満足したのか大きなローブを翻して、育ち過ぎた蝙蝠はその場から去った。
「だぁ〜めんどくせぇ」
「スネイプ教授ピリピリしてるね」
「ハリー・ポッターの件で俺にあたるのは違うだろ」
「減点されないだけマシでしょ」
「確かに」
トライウィザードトーナメントはもう終盤で、残る試練はあと1つ。最も危険だとかで選手はピリピリしてるし、リータスキーターは五月蝿くて仕方がない。早く終わらないかなと内心思ったりしたが行事は楽しむに越したことはないかと行きたくないとただを捏ねる葛葉を会場に連れていった。
帰ってきたハリー・ポッターが連れていたのはセドリック・ディゴリーだった。それは冷たいモノで、彼の泣き叫ぶ声がそれを物語っていた。
「アイツだ、アイツが戻ってきたヴォルデモートが!」
そう叫ぶハリー・ポッターをムーディ教授が連れていくのが見える。ヴォルデモートが蘇ったってどういうこと?例のあの人は死んだってそう聞かされていた。それを誰も疑いはしなかった、だってハリー・ポッターが生きてるから。もし生き返ったならこれからどうなるの?
ただ1人の同級生が言った言葉でみんなが混乱していた。私は怖くて隣にいた葛葉の手を握った。握り返される手に少しだけ息が整った。
その日はみんな寮に返された、噂によればバーテミウス・クラウチ・Jrがムーディ教授にポリジュース薬で化けていたらしい。毎年闇の魔術に対する防衛術の先生はおかしい。
「お前さ」
「ん?」
「家安全?」
「え?」
「いや、例のあの人蘇ったらしいから」
「……安全かどうかはわからない」
「…まぁいいやなんかあったら梟飛ばせよ」
「わかった」
きっと手紙を送っても返ってくるのは数回に1回くらいだろうけど、それでも今年は沢山置くべきだろうなと思った。魔法省はヴォルデモートの復活を否定している、でもスリザリン生は確信してた。数人の生徒は何かに脅えていて、事実であることがわかっていた。マルフォイは顔色が悪い。重い雰囲気のまま1年が終わった。
5年生になる頃、ハリーポッターが魔法省で裁判にかけられていた。17歳以下が学校の外で魔法を使うことは法律で禁じられている。でもそれは生死に関わるような状態であれば情状酌量の余地がある。ハリーポッターはディメンターが襲ってきたと発言したらしい。どうにも、日刊預言者新聞はなにかおかしい、ここまでダンブルドアとハリーポッターを目の敵にして…スリザリンの生徒は理解していた、ハリーポッターが言うことが本当であることを。でもそれは触れるべきじゃなかった。結局そんな騒動がありながら5年生は始まった。
「まじであのピンク野郎きしょい」
「これからアレが闇の魔術に対する防衛術ってなると先が思いやられるね…」
「関わらんとこ」
魔法省から派遣されたドローレス・アンブリッジ。それがあまりにも異質なのは見てすぐわかる。きっとこれから1悶着どころじゃない騒ぎが起こるだろなぁ、なんて想像しながらテーブルに並べられた数多くの食べ物に手をつけた。
結局4年生から葛葉との距離感は変わらず何だかんだでいつも隣にいた。葛葉も私も別に他に友達がいないわけでもないし、葛葉は最近面白い後輩を見つけたとかでレイブンクローとハップルパフの子にちょっかいをかけていた。それでも結局はここだった。それがお互いに心地が良かったから。でもそれはピンク色の小さな塊に壊されることになる。
「普通、魔法、レベル試験、略してOWL、通称ふくろうと呼ばれる試験です」
そう甲高い声で言いながら現れたアンブリッジ。先程まで綺麗に飛んでいた鳥は黒く焦げ机に落ちていた。いやでもまともな授業をしてくれるのではと少し期待した、配られた教科書を見てみると疑問しか生まれなかった。
「はい、Ms.グレンジャー」
「これ、呪文が書いてありません」
「呪文なんてこのクラスには必要ありません」
そうほざくアンブリッジにハリーポッターは噛み付いて、最終的には罰則を与えられていた。あの女何するか分からないからできることなら今後罰則を受けることがないように過ごしたい。
「まじで趣味悪いなあの女」
「それには同意する本当に」
「ハリーポッターも可哀想だな」
「あれだけ噛み付いたらね…」
「腹減った、大広間行こうぜ」
「うん」
大広間に行くとみんなヒソヒソと「アンブリッジのやつ、授業で呪文教えないらしいぜ」とか「ピンクすぎて気持ちが悪い」とか話していて、どこの寮でもアレは流石に無理があるらしい。
「そのうちよくわかんない校則とか生み出しそう」
「わかる」
「めんどくせ〜」
「1年間の辛抱でしょ」
「1年で変わる前提かよ」
闇の魔術に対する防衛術の先生は1年で変わるって呪いみたいな物がかかってるって噂で聞いたからたぶん変わるだろう、そう思って我慢するしかない。
大広間の外で大声が聞こえた、みんなぞろぞろと声の方に向かうとアンブリッジとマクゴナガル教授が口論をしていた。
「私の生徒に罰則を行う時は所定の手続きを行っていただきたいのです」
手に刻まれる書き取りの罰則の話だろう、最近ちょくちょく誰か呼び出されては手に傷をつけて帰ってくる、それに教授は怒っているらしい。
「私にも1つ我慢ならないことがあります、忠誠心のなさです」
「忠誠心のなさ…」
「ホグワーツの状況は予想より芳しくありません、コーネリウスがすぐさま対処するでしょう!」
そう声高らかに宣言してヘェンヘェン言いながらどこかへ消えていった。そして一時経ってアンブリッジはホグワーツ高等尋問官という謎の地位をコーネリウスファッジから貰った。謎の校則がどんどん増えていく。ウィーズリー製品は禁止、勉強中の音楽は禁止、なにもかも禁止禁止。
「くっそめんどいな」
「どれだけあそこに釘打付けるつもりなんだろうね」
いつも通り2人で歩いていると、噂をすればといった様にアンブリッジが歩いてきた。すると私の体に衝撃が来た。
「いっ…」
「は?」
「男女は離れて歩きましょう」
「だからって」
「Mr.ラグーザ!」
「…」
「何かありますか?」
「葛葉、いいから大丈夫だから」
「…なにもないです」
「えぇ、そうでしょうね…Ms.苗字は罰則です」
「は?なんで名前だけ」
アンブリッジは私にだけ罰則を言い渡してきた、きっとラグーザ家は魔法省でも割と権力持ちだから触りたくないんだろう。それに比べて日本から来たそんなに有名でもない純血ならいびりやすい。
「葛葉、大丈夫だから」
「でもッ」
「大丈夫だってば、ほら叶くん大広間にいると思うから先行ってて」
「…わかった」
無理やり葛葉を大広間に行かせてアンブリッジの方を見る。
「荷物を置いたら、向かいます」
「えぇ」
そういうとアンブリッジは歩き出し、道行く生徒の身だしなみを無理やり正したりしながらどこかへ行った。
「書き取りの罰則を与えます」
「何を書けばいいんでしょうか」
「そうね…私はふしだらな女ですと」
流石にふざけているのかと言いたくなったがここで何か言うとまた面倒なことになるのは目に見えていた。与えられた紙と羽根ペンで言われた言葉を書いていく。左手にピリピリと痛みが走る、それは段々と増していく。
「っ…痛」
「…どうかした?」
「…いいえ」
私の左手には「私はふしだらな女です」と英語で刻まれている。ある程度刻まれると「もういいわ」と言われ趣味の悪いピンクの部屋から出る。こんなのを見せたくない。
「エピスキー」
回復呪文を唱えてもその傷は閉じようとしない。
「エピスキー、エピスキー」
うんともすんとも言わない傷に嫌になって階段に座り込む。
「名前」
「…葛葉」
「手見して」
「嫌だ」
「見して」
何処から現れたかわからない葛葉が仕切りに手を見せろと言ってくる。見せられるようなものじゃない。治るまで手に包帯を巻きたいくらいだ。
「いいから」
無理やり手を引っ張られる。あの時とは違う強い力で。私はそれを振り払うことが出来なかった。
「あのクソ女」
「やめて葛葉」
我慢がならないという顔をしてどこかに行こうとする葛葉を止める。
「大丈夫だから」
「大丈夫ってお前さこんな傷つけられて黙ってられるかよ」
「葛葉…大丈夫だから」
私が傷つけられた事で葛葉が怒りを覚えている。それは私にとって何とも言えないむず痒さを感じるものだった。
「ね、大丈夫だから」
「お前さぁ…」
目の前でふわりと葛葉の匂いが香る。抱きしめられている。石鹸のような匂い。とてもいい匂いなはずなのに鼻の奥がツンと痛くなる。
「…ごめん葛葉」
「謝んな」
「つらい」
「だろうな」
「こんな傷見られたくなかった」
「スネイプに頼んでハナハッカエキス貰おう」
「うん…」
そこにヤドリギなんて無かったけど、ある必要も無かった。どちらからともなくキスをした。濡れた頬を拭いながら。