「はい、できた!」
「可愛い……!ありがとうお母さん!」
鏡に映るななしは、普段ひとつに括った髪型ではなく、母の手によって三つ編みにされていたた。三つ編みを纏めるリボンはスボミーのような淡い緑色。
先日、ソニアと遊んだ際にソニアが「ななしは髪型変えたりしないの?これとか絶対似合うと思うの!」と開催された女子二人のファッションショー。(髪型だけだが)
あれこれ試した結果、ななしは三つ編みが気に入った。だから、今日も三つ編みにしようと思い当たり、鏡の前に座って挑戦してみたのだ。
しかし悲しきかな、ソニアによって可愛らしく結われた三つ編みを思い出しながらしたはずが、ぐちゃぐちゃのものにしかならなかった。
ななしは一際臆病者でなおかつ不器用であった。
ショックを受け、少し涙目になりながらもクシを握り再チャレンジしようとしたところに母が現れた。まさに渡りに船。
助けを求めたところ、さすが母といったところか綺麗な三つ編みが完成した。
「ダンデくんのところの赤ちゃんを見に行くんでしょ?遅くならないうちに帰ってきてね」
「わかった!」
ハンカチにティッシュに財布。ポシェットに詰め込んで家を出る。向かうは近所のダンデの家。
本当はダンデから迎えに行くと言われていたのだが、ソニア共々彼の方向音痴の酷さをしるななしはスボミーと行くから大丈夫と断った。
どうして同じハロンタウンに住んでいるのに、ダンデはブラッシータウンに行くんだ?
「スボミー、行くよ!」
庭でうとうと日向ぼっこをしていたスボミーを呼ぶ。せっかく気持ちよさそうだし……とスボミーを置いていくと、後からスボミーに怒られるのはななしである。
ちょこちょこ歩くスボミーと共に道を急ぐ。
遅くないか、なんて心配をしだしたダンデがななしを探しに家を出て迷子になる……という事態を防ぐため。
庭のポケモンのバトルコートをつっきって、ドアのチャイムを鳴らす。
「いらっしゃい、ななしとスボミー!」
「お邪魔します、ダンデ!」
途中で歩くのに飽きてしまって抱っこを強請ったスボミーを抱え、家に入る。
「赤ちゃんどっちだった?妹?弟?」
「弟だったぞ!」
「そっかあ、弟……!」
一人っ子であるななしは自身の弟でないにせよ、年下という存在にわくわくしていた。
兄や姉のような立場のダンデ、ソニアはいたものの、この人口よりウールーのほうが多いのでは、と言うような田舎では年下なんて全くいなかったので。
弟も母も落ち着いたし、弟を見にこないかというダンデの誘いに飛びついたのだった。
ダンデに部屋まで案内してもらう。
「失礼します!」
「いらっしゃい、ななしちゃん」
部屋からはほんのりミルクというか、少し不思議な香りがした。ベッドではダンデの母が赤ん坊をあやしている所だった。
起こしてしまっただろうかと謝れば、丁度ご飯の時間だったから平気よと笑顔が返ってきた。
「ななしちゃん、抱っこしてみる?」
「えっ、いいんですか!?」
スボミーを床に下ろし、ななしは赤ん坊を受け取った。落としたりしないかと不安になりながら。
「気をつけろ、オレももう何回も抱っこしたが、ふにゃふにゃなんだ」
「うわ!本当だ……ぐにゃって……」
柔らかくて小さい赤ん坊。
優しい匂いがして、指で柔らかな頬をつつけば、きゅっと握られて。何が楽しいのかきゃらきゃら笑いだし。
「赤ちゃん……可愛いなあ……」
「今ではこんなに大きくなったんだけどね〜」
遊び疲れ、ウールーに寄りかかって眠るホップを見ながら、ななしは懐かしそうにしていた。
「へえ……そんな時代もあったんですね!」
「うん。あと私、ちっちゃいユウリも抱っこしたことあるよ」
「え!?あたし、知りませんけど!!」
「だってガラルに来たばっかりのときだから、すっごく小さかったもの。覚えてなくてもしょうがないよ」
あたしも!今より若いななしさん見たかった!!と地団駄を踏むユウリ。
ホップが産まれて少し、ななしの家の向かいに引っ越してきた女の子。
ホップと同い年であった彼女も、そしてホップもななしは妹や弟のように可愛がっていた。
そんな2人が、明後日にはダンデからポケモンを貰い旅立つということでささやかながら3人でパーティを開いていたのだった。
赤ん坊のころから2人を見ていたななしにとって、嬉しいような悲しいような。
ユウリやホップには親か!とつっこまれたが。
そうだ、今日はアルバムを引っ張り出して見返そう、ダンデは今日来るのだっけ、来たら一緒に見よう。弟分の可愛い話が聞けるかもしれない。代わりに不思議なくらいに彼と予定が合わない妹分の可愛い話を、ダンデにしてやろう。
とうとうユウリさえもホップと並んでウールーに寄りかかって寝始めたのを写真に収めながら、
ななしはそんなことを考えていた。