飴玉を砕くのはもったいないの
※付き合ってません
あ。
遊我といちご、2人きりの部室にいちごの小さな声が響く。隣に座る遊我にもその声は届き、機械弄りする手を止めて彼女の方に目をやる。
「どうしたの?」
「あー、あのね、飴玉補充するの忘れちゃった」
そう言っていちごは手にあった巾着袋の中身を見せてくる。見事といってもいいほど空っぽな巾着袋であった。
いちごはお菓子が好きなようで、巾着袋にお菓子を幾つか入れて登校し、休み時間だったりこういった部活が始まる前の隙間時間によく食べているのを見かけるのだった。因みに最近のブームは近所の駄菓子屋にある飴玉らしい。むぐむぐ頬張る彼女はどことなく一生懸命ご飯を食べる小動物のように見えて微笑ましさすら覚える。
「まあ飴玉だけじゃなくてお菓子控えないと駄目なんだけどね……」
「え!?いちご、あんなにお菓子が好きなのに止められるの!?」
「や、止めれるよ!」
「多分三日だよ、もって」
「……私も三日だと思う」
「どうしても辞めなくちゃいけない理由があるの?」
「……笑わない?」
「別に笑わないけど……」
あー、うーと恥ずかしそうに言葉を濁していたいちごだったが、意を決したように真っ直ぐ遊我を見て話す。
「虫歯……虫歯が酷くて……。歯磨きもしてるんだけど、多分歯が弱いから、お菓子極力控えなさいねってママに言われちゃった……」
「……ふふ」
「あー!笑った!笑わないって言ったのに!恥ずかしいじゃん小学五年生なのに注意されるほど虫歯あるって!」
「ごめんね!虫歯があることを馬鹿にして笑ったわけじゃないよ!ただ何となくお菓子を止めるなら虫歯とかかなーって思ったのが丁度当たってたから……。あれ、でもさっき飴玉舐めようとしてなかった?」
「一日飴玉一個ぐらいならいいかなって……。流石に今では舐めすぎたと思うし」
そんなー!放課後なら飴が舐められるって期待してたのにー!叫びながら、べちっと机に倒れ伏すいちごに再び笑いそうになるのを堪えた遊我はポケットからポップな包み紙にくるまれた飴玉を取り出す。
「はい、どうぞ」
「……飴!?」
シュバッと見事な効果音とともに、速い動きで反応するいちごに再三遊我は笑ってしまいそうになる。出会ってから、共にいた時間はそれ程長くはないのだけれど、彼女の言動がいちいちツボにハマってしまうのだ。嬉しそうに遊我から受け取ったいちごはその鮮やかな包み紙を剥がしていく。
メロンだろうか、マスカットだろうか。食べすぎたら体に悪くなってしまいそうな濃い緑色の飴玉が彼女の口に消えていく。
「おいし〜!待ち望んでた砂糖!おいしい……遊我、ありがとね!」
こちらも思わず頬が緩んでしまうほどに、幸せそうな笑みで飴玉を頬張るいちご。
遊我は返事しながら、飴玉一日に一個あげるぐらいならいいかなあと考えるのだった。