ロトムはシャッターチャンスを狙ってる
※支部からの転載です
「やったな、リザードン!」
「ばきゅあ!」
『チャンピオン ダンデ!初の防衛戦を見事勝利ーーーーーー!!!』
興奮したアナウンス。観客たちの歓声や拍手の音が止まないスタジアム。
バトルコートの中心でチャレンジャーと固く握手をかました後、勝利を収めた喜びをリザードンとハイタッチして表すダンデ。今がシャッターチャーーンス!!私は内蔵されたカメラを起動する。
「ダンデ〜!今日もいい顔してるロ〜!!」
「おっ、ロトム!サンキュー!」
リザードンと今度は肩を組んでピースサインを決めるダンデにナイス〜!!と叫びながらシャッターをきる。ファンサが光り輝いてる!ありがとうございます!!
どうも、私、ダンデのスマホロトムやってます!
私とダンデが会ったのは、ちょうど彼が旅立つ日。マグノリア博士の知人ーーそれまで私はその人の元にいたーーが、スマホロトムを開発したばかりで、ジムチャレンジャーに使ってもらえばよりスマホロトムの知名度が上がるのでは!?という思惑のもと、プレゼントされたのが私。友達のロトムはダンデの幼馴染みのソニアへとプレゼントされた。
私は興奮した。なぜならダンデは私の最推しだったからである。もっとも私が知るダンデの姿は10年後のものだったし、ヒトカゲを抱きしめる背丈も小さいダンデ(少年のすがた)は初見だったけど。
もう察しているだろうが、私は所謂成り代わり転生をかました元人間の女。転生云々はもう受け入れた事なので、とりあえず剣盾キャラクター箱推し、最推しダンデの元人間がロトムになったことだけ知っておいて欲しい。
ソニアに渡された友達のロトム。ちなみに名前はロトオと一緒に彼らの持つスマートフォンに飛び込む。そしてゲームやアニメでお馴染みのスマホロトムになった。
「これはスマホロトム。わたしの旧い友人が開発したばかりのものです。わたしの孫とその友人がジムチャレンジに挑むと聞き、旅の餞別として送ってくれたのですよ」
商品のPR目的も兼ねてますけどね……。
「様々な機能も取り付けられているそうです。きっと、これからの旅立ちに役立つことでしょう」
「よろしくね、ロトム!」
「ケテー!」
ソニアの足元にいるフシギダネとワンパチたちとロトオが挨拶を交わしてる。なるほど、ゲーム原作でいうホップポジションがソニアなのかな?
ダンデがヒトカゲだから、フシギダネ。ふむ。
「よろしく、ロトム。オレはダンデ!こっちはヒトカゲ!」
はわ〜!!!ゲーム内では見れなかった2人の幼い頃の笑顔にヲタク心が暴れまくる。可愛いね……2人とも……。私も人と同じように言葉を交わしたい……だが、ロトムの私にはケテケテなくことしか出来ない。アローラ地方で有名なロトム図鑑には特殊なスピーカーと人語翻訳機器が搭載されてるからに、ロトム図鑑は話せるらしいが、スマホロトムにはこれがない。よって話せない!
ちょっぴり悲しくなりながらもよろしく、とロトオのように挨拶を交わそうとした。
「ダンデ、よロトしく〜!」
え?
「ロトムが……喋った!?」
いつもの鳴き声ではなく、私は普通に喋ることが出来ていた。スマホロトムにはそんなシステムは無いのに。ロトミ姉さんズは、ポケモンセンターの機械に入るに当たって、多岐な難しい操作をトレーナーに教えたりすることもあるために人語翻訳機能はあるが……。
「なんで喋れてるロト!?」
「キミも分からないのか!?」
いや分からん。なんでや??どうしようとぷかぷか浮きながら皆を見下ろす。皆びっくりした顔をしている。
どうしよう、気味悪がられたら……なんてダンデのほうを見る。
「凄いな、ポケモンなのに喋れるなんて!改めて、これからよろしくな!何だかオレ、更にわくわくしてきたぞ」
ロトム以外にも喋れるポケモンに会えたりするのかなとはしゃぐダンデに思わず拍子抜け。
周りもダンデくんがいいならよしみたいな雰囲気でさらにポカンとマヌケ顔を晒してしまう。
え?いいの??着いてって……いいの??
「……ロトムでいいロト?」
「もちろん!」
ニカッと口を開いて笑うダンデ。白い歯が眩しい……。これが、フラッシュ……?
受け入れられたことが嬉しくて思わずダンデの周りをぐるぐる飛び回ってしまう。
「ダンデ!これからロトムが君をサポートするロ!よロトしく〜!!」
とりあえず、この意識せずとも語尾にロトが着くのどうにかなりませんかね?
そしてここからダンデとヒトカゲ、私の旅が始まったのであった。
ダンデって元主人公説が流れてたっけ……と今までの事を振り返ると、ふとそんなことを思い出す。マジで色々あった。伝説ポケモンとの絡みはなかったけど、ダイマックスを悪用しようとマグノリア博士の研究所に侵入した悪人をぶっ飛ばしたり、はたまたワイルドエリアにてポケモンを乱獲したりキャンプをするトレーナーから無理にポケモンを強奪するポケモンハンターをぶっ飛ばしたり。ダンデだけでなく、ソニアは勿論のことキバナもルリナも事件に巻き込まれてはぶっ倒していく。彼らが負けると言うつもりではないが、私や彼らの相棒たちは何度も悲鳴を挙げた。ボールの中からでさえも。ご主人〜!やめて、あっ危ない!の大合唱だった。心臓がいくつあっても足りぬとはまさにこの事。
私も事件に巻き込まれすぎて、ハッキングだったりジャミングだったり出来るようになってしまった。大好きなトレーナーが危ない目にあったら助けたくなるでしょうが!
悪党どものボスの、キリキザンのはかいこうせんをくらいかけたダンデを突き飛ばし庇ったのはめちゃくちゃ怒られたけど後悔はしてません。
よかったー!!ぎりぎりでスマホから脱出できて!!入ってたスマホはぐちゃぐちゃになってしまって、ああああ写真データ死んだ……とか思ってたけど、ダンデに無事でよかったとべしょべしょに泣きつかれて、静かにそっと抱きしめた。私の体に触ると感電しちゃうので、フリだけね。
無茶しないでくれ、オレ、強くなるから……って言われたら何も言えなかった。
まあ本人には言えないけど、私、後悔はしてないからな!!(2回目)
ダンデがチャンピオンになった時は凄かったね。大洪水よ、目が。ぐちゃぐちゃになってしまって、ショックを受けていたら開発者が新しいスマホのボディをくれたのだ。そしたらなんか涙でるようになった。これ何?オイル……??
ギリギリの戦いだったと思う。スピーカーが壊れるかと思うぐらいに応戦した。煩かっただろうから、周囲の人やポケモンたちには申し訳ないことをしてしまったけど。
原作キバナのスマホロトムのように、バトルコートで私も撮影したい!と幾度も言ってきたが、危ないからの一点張りでダンデが許可をくれることはなかった。はかいこうせんの時みたく躱せばよくね?とは思ったが、またオレを泣かせるのかと聞かれてひえ……無理ロトォ……。何なんだこの威圧……覇者か?あのワンパチ如くイヌヌワンした少年はどこに行った……いや元からバトルする時はこんな感じだわ。
たくさんのレポーターやカメラマンがダンデを取り囲む。私もすぐに彼のもとへ飛んで行きたかったが、難しいように思えた。しょうがない、落ち着くまで客席で待っていよう……と思ったときだった。
「ロトム、来い!」
マイクを借りたのか、エコーがかったダンデの声がスタジアムに響いた。
「ロト?」
人語が喋れるのがバレて、騒がれるのは面倒なのであくまで普通のスマホロトムのフリをして返事をする。先程までダンデを囲んでいた人の波がサッと左右に分かれた。モーセやんけ。
ダンデとリザードンの元へまっすぐ飛んで、どーん!とたいあたりをくらわせた。これは私たちがよくやるコミュニケーションの1つだった。……コミュニケーションというか、マイペースで暴走しかけた彼を止める手段の1つでもある。
最初はよろけたこともあったのに、今ではしっかり私のたいあたりを受け止められてしまった。
写真のデータはぶっ飛んでしまったけど、嗚呼、ダンデが成長したんだなあと実感出来て、再び涙ぐみかけた。
「ロトム、写真を撮ってくれ」
「……ロ?」
「ほらいつも撮ってくれたじゃないか?オレがバトルで勝つ度に最高だったよ、かっこいいよって撮ってただろう?」
ほとんどのバトルは危ないからって間近で観戦はさせてくれなかったんだもの。せめて、バトル後の1枚は撮りたかった。
バトルを愉しむダンデ、勝利にしがみつく獰猛さを見せたダンデ、仲間を信頼して指示を繰り出すダンデ。全てが詰まった写真が撮りたかった。
「オレ、決めていたんだ。オレがチャンピオンになったとき、一番最初にオレとリザードンたちを撮るのはロトムがいいって!」
「ダンデ……」
思わず声を出してしまった。ダンデは優しく笑って、大丈夫。こんな大きい歓声なんだから、キミの一言が聞こえることはないさ、と優しくスマホロトムのボディを撫でてくれた。
「ロトムはずっとオレたちの、最高の写真を撮ってくれた。さあ、ロトム!今回も、いつもみたいな、さいっこうなヤツを頼むぜ!」
「っ勿論ロト!……じゃあ、皆、はいちーずっ!ロトっ!」
パシャッ。
彼が初めてチャンピオンとなったあの日に撮った写真は、今まで以上の出来で、ダンデにちょっと恥ずかしいからやめろと言われても私はずっとその写真をスマホの壁紙にし続けたのだった。
手持ちみんなでリザードンポーズきめるダンデ、とか最高でしょ?