スマホロトムになりまして
スマホロトムたちの談話
「いーや、キバナのかっこよさが一番だ!」
「見て……このダンデとリザードンの笑顔……!国宝級でしょう……!」
ポケモンセンターの一角で今、仁義なき戦いが幕を開けていた。
赤コーナーはダンデのスマホロトムこと私。青コーナーはキバナのスマホロトムである。観客はルリナとソニアのスマホロトムたち。
「またやってるの?」
「どうせ最後には、ご主人サイコーッ!って叫んで終わるんだからやらなくてもよくない?」
ポケモンと喋る時は語尾にロト、がつかない不思議。いつも普通に喋らせて欲しい。
意地でもロトって言わないようにしても、自然とロトって出てくる。正直恥ずかしい。
不定期開催わたしのごしゅじんがいちばん大会である。勿論、皆ちがって皆いい。誰かを悪くいうつもりもない。しかし!自分のご主人がやっぱり最高なんだよねーー!!!
勝ち負けはない。そもそも勝ち負け決める基準が曖昧だ。ルリナとソニアのスマホロトムも、無闇矢鱈に語りはしないものの、やっぱり自分のご主人好き♡なのだ。そうでもなければ何年も契約を続けない。約3ヶ月のスパンで契約を更新するか、契約を破棄し、新たなスマホロトムorご主人と契約するかを決めるのだ。通常のスマホロトムは私のように喋りはしないにせよ、性格による持ち主との向き不向きはどうしても生まれてしまう。
まあ私たちは何年間もの付き合いなんで……もはや相棒マブダチよお!
言い過ぎました、ダンデの相棒はリザードンです、間違えるな私。
「ダンデがね、カレーを振舞ってくれたんだよ……。美味しかった……」
「ずっとドガース級作ってるって言ってなかったっけ?」
「それ数年前の話だから……!今では上手に作れるから……!まじ美味よ!」
「いいな、ルリナ作ってくれないかな〜」
「あっ、聞いてー!ソニアがね、いつも同じボディだから汚れ気にならない?って綺麗にしてくれたんだ!」
「「いいね〜!!」」
今日もご主人自慢トークは終わらない。ロトミ姉さんがストップをかけるか、自分たちのご主人が迎えに行くまで続くのだ。
「「ご主人サイコーッ!!」」
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戦えないロトム
既に言ったことであるが、ロトムは特殊なモーターがついた一部の電化製品に入り込み、姿形やタイプを変える。ヒートロトム、ウォッシュロトム、フロストロトム、スピンロトム、カットロトム。
何故この話をしたかというと、私の目の前に広げられた電化製品のカタログ。そういえば剣盾では、いちいち特定の場所に行かなくてもロトムのフォルムチェンジ可能になったんだっけ。
「これを使えば、ロトムのフォルムチェンジが見えると聞いたんだが……出来るのか!?」
ワクワク、見たいなー!とデカデカと顔に書いてある。分かりやすいんだよなあ……。ヒトカゲも興味津々!と言った顔で見てる。
「出来なくはない……と思うロト。バトル出来るかは分からないロ」
フォルムチェンジするものには入ったことが無いからよく分からないんだよね。スマホに入る練習はしていたから出来たんだけど。でもバトルは出来ない、絶対に。
「どうしてバトル出来ないんだ?」
「ロトムは技が使えないんだロ」
「え、技が!?10万ボルトとかシャドーボールとか?」
「それに加えて電磁波とかも無理ロト。技の出し方が分からないんだロ」
ポケモンのロトムとして生まれたからには、電気技もゴースト技もやってみてえ!と思ったのだが、やり方が全く分からなかった。
こう遺伝的に技の出し方とか知ってるものじゃないの??と混乱したし、友達のロトムたちに習ったものの一切技が出来なかった。
前世が人間だったからかは分からないけど。野生で秒で死ぬロトムやぞ、バトル出来ないポケモンとか。
「開発者やロトミ姉さんたちには、野生だと絶対死んでたとよく言われたもんロト〜!いやあ、スマホロトムっていう就職先あってよかったロ!」
それか間違えてトレーナーに捕まえられたりな。
こんなロトム、捕まえた方が可哀想だと思ってしまうな。
「……絶対ロトムとの契約切らないぞ、オレ……!」
「嬉しいけどなんでロト……?」
(自分との契約を切られてしまい、ワイルドエリアに捨てられる弱いロトムを想像し、守ってやらねばと決心するダンデなのであった。)
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専属カメラマン
いやあ、今日もいっぱい推しの写真が撮れた〜!
その中でも最高のものをピックアップして、SNSのダンデの公式垢に載せる。職務後で、ダンデがお風呂に入っている時間、彼のポケモンたちとお話しながらSNSを操作するのがナイトルーティン。ダンデに任せてしまうと、ほぼ投稿しないので、私が彼の代わりに垢を運営している。
ダンデ@……
今日はトレーナーズスクールにお邪魔したロ!
【ダンデとリザードン、子供たちの写真】
どんどん増えるいいねとRTでニコニコ。
ふふふ……ダンデたちだけでなく子供たちも、輝かんばかりに笑っているこの写真は素晴らしい出来だと思う。見ろ見ろ、こっちの頬も緩んでくるぞ!皆のハッピー製造マン……。
ダンデもチャンピオンになって慌ただしい日々を送っているが、なかなか板に付いてきたじゃないか……!感動の涙がほろり。
「おっ、ロトム。SNS更新してくれたのか?サンキュー!」
濡れた髪をそのままにしてダンデがリビングへとやってきた。雫が落ち、シャツが濡れてしまっていた。はわ……濡れた首筋エッロ……。
短髪だからすぐ乾くとよく乾かさずにリビングへ戻ってくる彼だが、ドラパルトがタオルを持ってきて拭いてやっている。少し抜けたところがあるトレーナーだからか、彼の手持ちはだいたいしっかりしている。その筆頭は勿論リザードン。
ダンデがふう、と息をつきながらソファに深々と腰掛ける。チャンピオンとしての職務に慣れてきた彼は、初めはよく疲れていた様子を見せていたが、最近はガラルのトレーナーを強くするという新たな夢の元、楽しみながら励んでいた。
だから、こんな様子を見せるのが久しぶりであった。
「ダンデ疲れてるロト?疲れてるんだったら、早めに寝た方がいいロト」
それともちょっと今からスケジュール変えてゆっくりダンデが寝れるようにするか……とスケジュール帳のアプリを開いた。
「心配してくれて嬉しいが、疲れているんじゃないんだ。……うーん、疲れているのか?」
「もしかして今日、何かあったロト?」
今日は、先程呟いた通りトレーナーズスクールを訪ねたことしか大きな仕事は無かったはず。
見たところ、それほどの問題も無かったように思われる。
「うーん、今日はカメラマン役はスマホロトムだけだっただろう?」
「そうロトね。教室にカメラマンが入るのは邪魔かもしれないってローズ委員長と話してたロ」
「よく雑誌に載せる用に写真を撮るんだが……。カメラを意識するとどうにも緊張してしまうんだ。ロトムが撮る時は逆に安心さえするから不思議だったんだが、ロトムはずっとオレを撮ってくれているからな。きっとロトムなら大丈夫って自然に思ってしまうんだぜ!」
「ヴォッ」
「ヴォッ?」
ダンデの写真をよく撮る私だが、仕事は写真を撮るだけでは済まないので雑誌用などの写真はカメラマンに任せていた。
こんな、こんなこと言われるなんて!
スマホロトム冥利に尽きるんだが〜!?
その後、嬉しさのあまり泣きながら「ロトムが……ダンデの専属カメラマンになるロトォ…………!!ロトムが全部撮るロトォ……!!」と交渉しだす私がいた。
(10年後は普通にカメラ慣れするし、ファンサもばんばん決めるダンデだけど最初は緊張することも多々あった……らいいなという妄想のもと)
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庇ったロトム 庇われたダンデ (ダンデ視点)
ドンッ
思いっきりオレを突き飛ばしたのは、見慣れた赤いボディのスマホロトム。
幾度も旅の途中で、オレのリザードンやソニアのフシギバナがなかなか見ることのないレアな個体だと言い、奪おうとして襲ってきたポケモンハンターたち。徒党を組んだ奴らは他にも様々な悪事を働いており、巻き込まれる度にオレたちは奴らと戦ってきた。
きっとこれが最終戦だ。目の前に対峙する男は悪党たちのボス。今まで戦ってきた奴らの中で群を抜いて強い。お互い手持ちを倒し倒され、とうとう最後のリザードンを繰り出すことになった。相手も同じくキリキザンのみ。こちらがタイプ有利をとれていて、かつキリキザンはかなり体力を削られていたから少しだけ安心していたのかもしれない。勝つことが出来ると。
悪事に手を染めることを厭わない男がまさか、やけくそにオレに向かってはかいこうせんを指示を出すなんて。キリキザンと組み合っていたリザードンがこちらに動き出すのが見えた。
しかし、オレが焼き尽くされるほうが早い、そう思った時だったんだ。
ロトムがオレを突き飛ばしたんだ。
普通とは少し違うオレのスマホロトム。喋りだしたときは驚いたし、バトルが出来ずもはや野生で生きるのは危なすぎると話を聞いた時は守らねば……!ともなった。方向音痴で、写真を撮るのが大好きなオレのスマホロトム。オレの旅は、ヒトカゲとロトムと始まった。
ワイルドエリアで迷う中、テントの中で皆でくっついて寝っ転がりながらいろんなことを話した。カレーをよく焦がして失敗してしまうのに、アドバイスをくれたのはロトムだった。
いつのまにか大事な存在になっていた。相棒のヒトカゲや手持ちたちとは少し違う、でもいつも一緒にいてくれる大切な存在。
バトルが終わったらすぐ駆けつけてくれて、かっこよかったロト!さあ記念の1枚ロ〜!って言ってくれるのが当たり前になって。このロトムと契約を切るなんて考えたことがないぐらいに。
「ロトム……!?」
凄まじく熱を帯びた光線が地面を抉る。
そんなものにスマホが耐えきれるはずもない。そしてロトムだってそうだ。
光線が姿を消したあとそこにあったのは大穴とぐちゃぐちゃでもはやスマホとは言いきれないなにかがあった。
「まさかトレーナーを庇って死ぬとはな……!」
男の声が現実を突きつけてくる。
即座にリザードンにだいもんじを指示する。反動で動けなくなったキリキザンは避けることが出来ず、だいもんじが直撃した。元々残り体力が少なかったキリキザンは倒れた。オレは勝ったのだ。
ジュンサーさんが逮捕したボスを連れていく。
勝った、のに。いつも褒めてくれる声が無い、写真を撮ってくれるロトムがいない。
リザードンがそばに寄ってくる。お疲れ様、と言うが我ながら声に覇気がない。リザードンもロトムがはかいこうせんをうけたのを見ていた。オレの声に答えるリザードンの返事も悲しそうで。
せめてボディだけでもと手を伸ばした。
「ケテー!」
「どうしたロトム……。え?ロトム!?」
久しぶりに聞いたロトムの鳴き声。いつもスピーカーを通して人語を話す声しか聞いてこなかったから。ロトムのケテケテと鳴く声は久々だった。ぴょんと現れた一体のロトム。
ケテ〜!ぐるぐるとオレとリザードンの周りを飛び回る姿がオレのスマホロトムと被った。
「キミはオレのスマホロトムに入っていたロトムか……?」
「ケッテー!」
そうだと頷きながら返事をするロトム。
感電するのを防ぐためか、オレに飛びつくことはしないにせよ、そっと寄り添ってくる。
生きていた、ロトムが。死んだとさえ思ってさえいた。いつものようにはしゃぐロトムを見ると何だか安堵を覚えた。どっと体をバトルを終えた緊張やらロトムが生きていた安心やらがめぐる。
視界が歪んでいく。頬に熱い雫が垂れる。嗚呼泣いているんだと思った。心配そうに覗き込むロトムにちょっとだけ笑ってしまう。
「無茶をしないでくれ、ロトム……。君に庇われないぐらいに強くなるから……」