「ね、桃子、遊戯の家に久しぶりに遊びに行かない?」
「さすが杏子!あたしも同じこと思ってた!」
2人は手を繋いで、急いで教室を飛び出した。遊戯に、家に行くことを伝えようと思ったのだが、運悪く彼は既に教室を去ってしまっていた。
暫く行っておらず、桃子はそもそも遊びに行くことが少なかった(遊戯から、彼女のもとに遊びに来ることが多かった)ために、遊戯の家までの道のりは朧気だった。杏子がいなければ、絶対に迷っていたとさえ思う。
「杏子がいてよかったあ……」
「あんまり行ってないし、覚えてなくてもしょうがないわ……ほら、見えてきた!遊戯の家よ!」
記憶に微かに残る見目をした、遊戯の家兼亀のゲーム屋が見えた。そして今にも家に入ろうとする遊戯の姿も。
「遊戯ー!」
「あっ、桃子に杏子!」
「久しぶりに遊びに来ちゃった!ね、桃子?」
「うん、あたし遊戯の家来るの凄く久々!……そうだ、遊戯。遊戯のおじいさんに線香をあげていってもいい?」
「線香……?そもそもじいちゃんは死んでないぜ?」
え?と桃子が遊戯に問い返す前に、遊戯は扉を開ける。店に入った一行を迎えたのは、死んだと思われていた遊戯の祖父、武藤双六の姿であった。
思わず幽霊かと思った桃子と杏子はお互いに飛びついて悲鳴をあげ、遊戯を質問攻めにしていた。
「ちょっと遊戯どういうコト!?」
「形見だって……え、でも……生きてるよね!?遊戯のおじいさん!」
「アレ、形見になる予定ってことだよ!」
「ま、紛らわしい……!」
二人で思わず頭を抱える。混乱させるようなことは言わないで欲しかったものだ。とりあえず、双六が生きていてよかったとも思うけれど。
殺すなよな!と叫び、続けて杏子へのセクハラともとれてしまう発言をする双六を見た桃子は拳を握りしめながら、ただでは死ななそうなおじいさんだなあ、とぼんやり考えた。
「おお、もしかして桃子ちゃんか?相変わらず小さいまんまじゃが、昔より元気になったようでよかったの!」
これ以上杏子へのセクハラ発言をするものなら、ちょっと叩くぐらい許されるかしらと拳を振り上げかけていたのに気付いてか双六の視線は桃子へと向かう。
双六もまた、彼女が入院している折に、遊戯と共にゲーム片手によく見舞いに来ていたのだ。
「昔よりは伸びましたよ!体調は昔よりずっと良くなりましたね……入院はもう無さそうです」
小さい、に何処か身長だけではないニュアンスが込められていると思ったのは自分の被害妄想だと唱えながら、桃子は返事をした。
それを聞き、さらに破顔する双六を見て、やはり死んでいなくてよかったと桃子は安堵する。
「二人とも一緒にパズルしようぜ、じいちゃん、麦茶ー!」
元気に伝え、階段を上がろうとした遊戯の足を止めたのは双六の言葉であった。
双六が言うには、あの宝箱に入ったパズル、「千年パズル」は人智を超えたものであること。ファラオの墓から持ち出されたが、発掘に立ち会ったものは全て謎の死を遂げている、いわくつきのものであること。
「そして最後の一人はこう言い残して息絶えたそうじゃ……「闇のゲーム」……と」
おどろおどろしい声で話される内容に杏子は怯えた様子を見せ、パズルに対しても恐怖感を抱いたようであったが、遊戯本人はそれよりも闇のゲームというワードに惹かれてしまっていた。
「……この箱にはこう文字が刻まれとるそうじゃ……。『我を束ねし者闇の知恵と力を与えられん……』」
双六は宝箱の文字をなぞりながら読み上げる。その内容に、遊戯は絶対にパズルを完成させると盛り上がった。
そしてそこから双六のセリフを皮切りに始まった祖父と孫の追いかけっこが始まったのに対し、杏子は苦笑を漏らす。
「あはは……。どうする?もう時間もあれだし、帰っちゃう?……桃子?」
「え、あ、そうだね、帰ろっか杏子!」
焦った声で返事をする片割れに不思議そうな顔をしながら頷いた杏子は、依然として追いかけっこを続ける二人に、お邪魔しましたと挨拶をした。