葬列
其の夜、和臣に報告と承諾を得に来た弁護士は姿を直視出来ず居た。一度も会った事が無い為本人か如何か弁護士には判らなかったが、雰囲気は先日死んだ木島其の物だった。
煙草を咥え、険しい顔で書類を眺める和臣は鼻で笑った。
「税金、凄いだろうな。株は売った方が早いな。」
喉の奥で笑う和臣に、昔の木島の影が重なる。其の威圧に、顔が上げれず、俯いた侭弁護士は言葉を待った。
自分の書類に捺印した和臣は投げて寄越し、作り直された宗一の書類を見た。
「宗一は、何時から木島だったっけ…。まあ、良い。」
時一の書類には何も触れず、無言で捺印した。
「時恵は遠の昔に本郷家の人間だからな。離縁する気は無さそうだし。」
椅子から立ち上がり、捺印し終えた三枚の書類をばら撒いた。落ちる書類の隙間から見えた和臣の背中。全く似ている。
「手続きを始めろ。」
其の声さえ、似て居た。
身震いが起きる身体を触り、一体此の先、此の国が如何なるのか、弁護士は不安を覚えた。
「其れと。」
ゆっくりと振り返り、暗く良く判らないが、見えた歪む口元。歪むというよりは、上がっている様に見えた。
「在の屋敷は、潰さん。」
其れは、和臣が最後に見せた、人間らしさだった。
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