大英帝国


写真で見た事ある風景。美しさは同じなのに、黒髪の自分を見る其の目は嗜虐を孕み、拓也は仕事以外家から出る事は無い。
「何処に行っても、俺は弾き物か。」
英吉利に来て一週間。和臣からの指令をこなすだけで、何もする事も無ければ気力も無い。アパートに帰れば帰ったで、若い隣人が騒いで居る。
「伊太利亜にしてくれりゃ、良いのによ。」
花も娯楽も無い詰まらない生活に息を吐き、別の地だったらと、無駄な望みを思う。
「たーのしくねぇ…」
机に突っ伏し、書類を床に捨てる。其れを拾う部下の五十嵐。
息を吐き、視線を逸らす。
何と云う事は無い。井上が英吉利に居る間、何も心配する事は無かった。
和臣の笑の指すもの。部下の半分が付いて来た。
「何で英吉利に来て迄、御前達の面倒見なきゃいけねぇんだよ。」
「あ、在の子可愛い。」
「止めろ、日本の恥晒しが。」
窓にへばり付き、外を通る女の子に下心を灯す五十嵐に、毎度乍ら灰皿を投げ付ける。
「あー、頭痛い。」
酒瓶に口付け、其の痛みを鎮める様に、強いアルコールを流し込んだ。




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