GOD save the


最初は、何で塩をパケットに入れているのか判ら無かったが、小指に付いた其れを舐めた時、世界が一瞬揺れた。一分もしない内に足が床からふわふわと浮き始め、すとんと落ちた。
床に座り込んだ俺にジョルジュは本から目を離し、慌てて本を閉じた。
「アンリ。此れ舐めたのか?」
小さなパケットを振り、ジョルジュは聞いた。目覚める時の様に頬を数回叩かれたが、俺の目は見開いた侭何処かを見ていた。
「ねえ、ジョルジュ…」
「舐めたの?」
「俺、飛んだね。」
「しっかりしなよっ」
今度は強く叩かれ、俺は頭を振って気が付いた。
「あれ…」
心配と不安と怒りを混ぜた様なジョルジュの顔に、瞬きを繰り返した。
「舐めた?」
「うん…。小指に少し付いて…」
ジョルジュは深く息を吐き、頭を抱えて立ち上がった。
「S**t...」
「ハニー…?」
汚い英語を話すジョルジュに俺は不安を覚え、舐めた其れがヘロインだと知る。コカインもヘロインも違法物には変わり無いのに、俺は悪い事をした気分に陥った。
「少ないから良かったけど…、まあ、置いてた俺が悪かったけど、ヘロインは薦めない。」
元締めも売人も同じ事を云う。其れを売り捌き、金を稼ぐ人間が何を云っているのか俺には理解出来無かった。
在の感覚が身体から離れず、ステージの上とは比べ物にならないエクスタシィが確かにあった。
小指に付いた少しの量で身体が浮いた。ならば、此のパケットの中を全て使えば如何なるのであろうかと、誘惑された。
ジョルジュが俺の夢を壊した訳では決して無い。唯、壊す手伝いをしたに過ぎ無い。
緩むネジに触れ、偶然何かの弾みに落ちた。ジョルジュは其れを探したが、俺は探さ無かった。
夢を、自分を、全て壊したのは、確かに、俺自信だった。




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