夢と思い出


珍しく遊戯場に居た。何時もは外で痴呆老人の様に空を見て居るヘンリーが、遊戯場で女達と遊ぶ。凄く違和感覚える光景だった。上官の云う通りヘンリーは女に持てる。王様みたく女達を囲い、カードゲームに勤しんで居た。
「ヘロイン、コカイン、ダイナマイト。」
「何其れ。」
「世界を壊すのに必要な物。」
何が面白いのか女達は下品に笑い、カードをばら撒いた。
「何か面白い事無い?」
詰まらなさそうにカードを鳴らして遊んで居たヘンリーは、テーブルに置くと無言で椅子から立ち、ソファで本を読む女の前に立った。
「煙草を頂きたいのですが、御嬢さん。」
煙草を持って居たカリーナは本から目を上げ、勝手に取って、と箱を指した。数回紫煙を上げ、灰を長く作った。辺りを見渡し、女達と視線を合わせると眉を上げた。
「レイディ カリーナ。」
「…………何?」
少し怯えた声。
臆病なカリーナは自信家のヘンリーが嫌いだった。
「灰皿は何処ですかな。」
其処、と本を少し下げた其処にヘンリーは灰を落とした。
「一寸…」
「何?」
「何で此処に落とすの?」
言葉の途中でカリーナは泣き出した。何度も読み返す程大好きな変色した本を灰皿変わりにされていた。女達には此れが面白い事。美女で誰ともつるまない気に食わないカリーナが泣くのは此の上無く楽しい。やった張本人は欠伸して居た。
「カリーナが泣いた。」
「やったやった。」
「ざまあみろ、阿婆擦れ。」
嬉々と手を叩き、そんな女達を余所にヘンリーは座って居た陸軍の奴に慰めてやってと静かに云った。
「カリーナ、こっちにおいで。」
「ヘンリーが、ヘンリーが…」
「よしよし、嫌だったね。」
優しく肩を抱かれ、泣き乍らカリーナはソファを立つが女達は其れさえ気に食わない。居ても腹立つ、居なくても腹立つ。女とは、そんな生き物だ。
何もかも楽しく無いと云わんばかりの表情で俺の横を通り過ぎる。
「カリーナが気に食わないから、自分が消えれば良いのに。」
物騒な事を口走って居た。
ルカがアリスなら、ヘンリーはジキル博士とハイド氏だ。
上官がヘンリーを紳士と云ったのは強ち間違いでは無い。ヘンリーは紳士で、そして凶悪だ。




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