ALICE in rehab


罪を罪だと認めない、其れこそが罪。
ハロルドは呟き、グレンに向いた。
「君の罪って何だい?」
「美しい事かしら。」
「大罪だね。」
傲慢、嫉妬、怠惰、強欲、色欲、憤怒、暴食。此の七つの大罪を、ハロルドは知って居る。
グレンは嫉妬。自分以外の美しい奴は認めない。そして、女、と云う固有体だけで愛される女が嫌い。
ルカは暴食。食欲の制御装置が完全に壊れて居るのか、常に何かを食べて居る。
ブラッドは強欲。最高傑作に固執した天才。
ハロルドは憤怒。くたばれと世間に、暖簾に腕通す行為を繰り返す。
皆、一つは何かしら此の大罪を持つ。其れに怠惰と色欲を重ねる。
「グレンダ、キスし様か。」
「あら、良いわね。ユダのキスかしら。」
毒々しい林檎を纏うグレンの唇をハロルドは舌でなぞり、其の林檎を食べた。色を無くした自分の唇にグレンは顔を顰め、鏡を見ると新しい林檎を実らせた。
「最近、リップスティックの減りが早いわ。」
「俺が食べてるからだね。」
ハロルドは項垂れた侭笑い、後ろから近付く足音に頭を上げた。窓硝子に映る姿、其れに眉を上げた。
残り一つの大罪、傲慢。
「時間だ。」
ハロルドの座るキャスター付きの椅子の背凭れを掴み、先の見えない長く続く廊下に向けた。
「行ってらっしゃい、ヘンリー。又五分後ね。」
グレンの気持は完全に鏡に向いて居る。鏡を見乍ら手を開閉させるグレンにハロルドは「世知辛い」と、足を椅子に乗せた。
「歩け。」
「自分で歩くより、君が此の侭押した方が速い。」
歩くの何て面倒臭いと髪を上げ、両手を前に突き出した。
「ゴー。」
「はいはい。」
キャスターが回り、亀の様に動く椅子にハロルドはへらへら笑った。正面を向いて居ても面白く無いので、背凭れに向き、しっかり持つと腰迄伸びる髪を床に垂らした。
「床を掃除してあげる。」
「其れは有難う。」
部屋に着いた頃にはハロルドの毛先はモップに姿を変えて居た。五分の其の間、ハロルドはずっとモップの手入れをし、結果カウンセリングの意味は無かった。




*prev|4/7|next#
T-ss