ウェストウッド通り


「前から云いたかったんだけど。」

カウンターに並ぶ三人の顔。
定位置のイヴ、其の左にヘンリー、椅子三つ挟んでヴァレリーが座る。
イヴとヘンリーは腕を絡ませ談笑し、何の目的か、イヴの監視か、無言で酒を飲むヴァレリー。
アイヴァンの声に三人は顔を向け、イヴはピーナッツを噛み砕いた。

「此処、政府関係者の溜まり場じゃないんだけど。」
「政府関係者?誰がだ。イヴか?」

其処で初めてヴァレリーはイヴ達の方に向いた。

「私?無職よ。ヘンリーじゃない?」
「僕?いいや僕は唯のロイヤルネイビーだよ。」
「俺は此処の管轄刑事。ロンドン市民を守ってる。」
「うん、じゃあ僕はイングランド海域を守ってる。」
「私は美貌を守ってる。…アイヴァンは?」

イヴのピーナッツを噛み砕く音が虚しく響く。ヘンリーは、グラスを口付けて居るがビールを飲むのを待ち、ヴァレリーはワインボトルを持った侭グラスを傾けた。

「…此の店?」
「あは、かっこいー。」
「ナイス。」
「市民栄誉賞だな。」

アイヴァンが答える迄にヴァレリーはボトルを持った侭二回グラスを空にした。イヴが無くなったピーナッツを探した。ヘンリーのグラスは漸く空になった。

「誰かピーナッツ持ってない?」
「煙草何処やったかな。おいイヴ、煙草寄越せ。」
「ビールもう一杯頂戴。」
「一寸、もう一寸褒めてよ。」
「あんた唯のバーテンダーじゃん。」

確かにイヴの云う通りだが、アイヴァンがバーテンダーとして働かなければ此の店は機能しない。元のオーナーはイヴの母親、譲り受けたのは恋人だった現オーナー。然し現オーナーに酒の知識は無く、唯イヴの母親の居た場所を残したい為譲り受けたに過ぎない。此の店が無くなればイヴの母親の痕跡は無くなってしまう。イヴも居場所が無くなる。

「判った、言い直す。イヴを守ってる。」

今度は全員無言だった。
イヴは目を逸らし、ヴァレリーは意味を探る目でアイヴァンを見詰め、ヘンリーは態とらしく喉を鳴らし乍ら睨んだ。

「イヴの海域は僕のだぞ。」
「うん…、ヴァギナに興味は無いよ…、存分に泳いでて…」
「酔った酔った、トイレ行こう。」

回転した椅子、ヘンリーは相変わらずアイヴァンを睨み付け、ヴァレリーの動きを確認したのはイヴだけだった。

「ねえもう睨まないで…」
「…トイレ行って来よう。」
「え、一寸。」

イヴの言葉を聞かずヘンリーは椅子から降り、ヘンリー、と云う言葉と一緒にドアーを開いた。

「お前変態か!?ノック位しろよ!」
「鍵掛けてよ!」
「一寸、一寸何で入って来るんだよ!」
「良いじゃないか、僕は手を洗いたいんだよ!」
「だからって…」

ドアーはあっさり閉まり、不気味な程静かなトイレをイヴは眺めた。

「静かね。」

キスでもしてんじゃないのとイヴは云う。

「防音バッチリだからね。」
「え、何で?」

開いたドアー。

「おい、此のコンドーム誰のだ。」
「素晴らしいブリティッシュスタイル。」




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