ウェストウッド通り


同じ事件を追って居た刑事が二人殺された。
一人はケネス・エリオット、六月の月の綺麗な日に殺害された。追って居た事件の被害者の一人でもある。ペニスを切り取られ、死体はタワーブリッジの直ぐ近くにある公園のベンチで発見された。着衣に乱れは無く、早朝ランナーは酔っ払いが寝て居るのだろうと云う感覚しか無かった。公園を一周した一人のランナーが「酔っ払いが寝て居る」と近くの交番に帰り際寄った。通報受けた巡査は見知った顔に眉を潜め、酒のは強い人なのにと肩に触れた。

「刑事、エリオット刑……」

二人目の刑事は、ヴァレリー・デスタン、六月に殺害されたケネスの同僚であった。此方は青さを蓄える濃霧の夜に殺害された。
刃渡り30センチ程のナイフで背中を刺され、有料トイレに捨てられて居た。発見者は近くのスーパーに務める女で、事務所からトイレが遠いと云う理由で出勤前と出勤後に使用して居た。
朝、トイレに寄った女は赤いマークにノックをした、二分経っても開く気配が無かったので一先ず出勤した。尿意の危機的状況でも無く、習慣化して居ただけで問題は無い。夜、又同じ様にトイレに寄った女は、未だ赤いマークを示すトイレにドアーに息を吐いた。

「何で今日はこんなに此のトイレ人気なのよ。」

何時もは緑のマークしか見せないのに。其の日は其れで帰ったが、流石に翌日も同じ状況だと疑問が湧いた。若しかしてマークが壊れて居るのでは無いかとコインを入れた。
朝の雑踏に、女の悲鳴が響き渡り、何事かと集まった通行人の悲鳴も混ざった。朝の混雑は違う意味で混乱し、其の様子を、乾き切ったワインで顔を染めるヴァレリーが見詰めて居た。



「嗚呼、あの女、…あのクソ女が!」
「ラッピン捜査官!」

机に積み上げられる捜査資料に八つ当たりをした。二人の部下であった刑事が慌ててラッピンを押さえたが、資料に八つ当たりしただけで怒りが収まる筈は無い。白い頬は怒りに痙攣し、資料を拾う刑事達が群がる床を白む視界で睨み付けた。
いや、犯人を睨み付けて居た。
怒りで顎関節症になりそうだった、今にも奥歯が砕け散りそうだった。目を閉じ、何度も鼻から熱い息を抜いた。怒りは一向に収まらず、眼鏡を外すと垂れ下がる前髪ごと頭を掛かえた。

「ああああああああ!」

資料を机に戻す刑事達は、ラッピンの怒りに触発されない様に黙々と作業を続けた。

「もう…容赦しないぞ…、イヴ…」

二人に共通する人物、其れだけで取り調べの対象。
あの黒い目で自分を見詰めるのか。
打ち消す様にラッピンは瞼を閉じた。




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