ウェストウッド通り


確かにブロンドで、赤い口をしているけれど、此の女は誰だろうと、記憶に浮かぶイブは眉を顰めた。
イブの母親は、黒い目をして居た。決して、今目の前に居る男と似た様な青さは持って居なかった。
だから、自分の目は黒いんだと。

「アンナ・オリファントは、君の実の母親じゃない。」
「え…?」

何ヶ月も聞き慣れた声なのに、生まれて始めて聞く声に思えた。

「君の母親は、アンジェリーナ・ポーター。14年前、夫を殺害した殺人犯だ。君が、5歳の時にね。」

轟々と耳鳴りがし、イヴは額を押さえた。

「アンジェリーナ、ポーター…?違うわ…。私のママは、アンナ・オリファントよ…最高のジャズピアニストの…」
「アンナ・オリファントは、アンジェリーナ・ポーターの親友。捕まった母親の変わりに君を育てて居た。君の出生国はアメリカ、事件の後直ぐにイングランドに移住した。」


男達への復讐は、何も君から始まった事では無い。君の母親が、君に其れを植え付けた。
君がミキサーを使い、被害者のペニスをソーセージにし、尚且つ其れを他人に強要した其の残酷性は、君の思考じゃい。
アンジェリーナ・ポーターが夫の死体を隠滅する為に、君に植え付けた思考。


「君が殺した人間は全員、君の父親に似て居た。全部がじゃない。所々。特にそう、生きている時にしか共通しない、雰囲気。独占欲が異様に強く、尚且つ支配的。」

淡々と説明される此れは、自分の事なのか。
イヴは短く呼吸を繰り返し、記憶と現実を整理した。

「君が俺を殺さなかったのは、俺が独占欲を見せなかったから。ケネスを殺したのは、君に独占欲を見せたから。違うか、イヴ・オリファント。いいや、グレンダ・イヴ・ポーター…」

男の口から出た名前に、イヴは全ての記憶を繋げた。

「グレンダ…」

父親の名前は、グレン。だから、グレンダ。其の名前を呼びたくない母親からと、イヴと呼ばれていた。

「君が仏蘭西人嫌いなのは、父親が、仏蘭西人だからさ。」

アンナ・オリファントが死んだ時、イヴの事は警察が調べていただろうに、誰も其の事に気が付かなかった。唯一気付いたのがヴァレリーで、FBIに過去の事件を調べさせた、そして、ヴァレリー読みが完全となった時ラッピンが呼ばれた。
アンナはイヴと同じ年で、同じ名前の娘を、アンジェリーナが事件を起こした時亡くした。誘拐され、其の数ヵ月後死体として発見された。警察はアンナに確認を求めたが、自分には娘が居るので似ているだけで人違いだろうと、相手にしなかった。そして、周囲の煩わしさから逃げる為、知り合いも、此の事件も知らない、言葉が通じる国…イングランドに飛んだ。
全て巧妙に絡んだ事実。

「イヴがフランス人と男嫌いなの、何故か判る?刑事さん。」
「いいや。」

確定したイヴの逮捕にアイヴァンは項垂れ、アンナの悲しそうに揺れる瞳を思い出した。

「イヴはね、フランス人の実の父親に、性的関係を迫られて居たんだよ。だから、男と、フランス人が嫌い。潜在的にね。」
「何故、君が其れを知っているんだ?」
「アンナから、聞いたから。あの子の父親は、5歳になる娘の美しさに眩んで性的感情を抱いてベッドに入れ込むのよ、って…………………」




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