松山さん


最初から詰まらん女やった。不細工が一寸見れるかな程度。でもやっぱりブス。男に入れ上げ、金がもう借りれんと判ったらあっさり捨てられる程度の阿呆女。
不細工が、何を勘違いしたのか。
「ほんま困ってんですよ…」
金は返さん、返せん理由は仕事が無いから、だからと仕事を与えて遣ったのにストライキ。
此のブス、何を調子乗っとんねん。客が付くだけでも有り難い話や無いか。
店から連絡貰い、まさかわしが現れるとは思わんかった女は、最初こそ狼狽と言い訳を見せたが、三十分後には開き直り、膨らむ鼻から煙を抜いた。
「もう、返済出来てんのと違いますぅ?」
ふてぶてしく煙を吐く、形の良い唇。ブスも、何から何迄神様の不始末な訳では無い、此の女は、全体を見たら不細工で、パーツ一つ一つは形良かった。
本物の神様の不始末は、島谷弟みたいな顔を云う。
「ブスに加え金勘定も出来へんパァか。」
「だって、一年働いてるもん…」
無駄に奇麗な髪をしおって此のブス、毛根から引き抜く勢いで掴み上げた。
「御前阿呆か、御前みたいな不細工、幾ら客付いても足らんがな。足らん御蔭で利子も増えとるわ。」
「痛いッ」
「痛い事された無いなら、もっと稼がんかい。おい。」
店長に向き、此処三ヶ月の売り上げ状況を見せて貰った。
信じられん、此のブス、何で平均で二十人しか相手して無いねん。然も基本だけ。
「おおこらブスッ、何やねん此れッ、股開く位ならわしかて出来るわッ」
売り上げ状況を表す書類で顔面叩き乍ら、ありとあらゆる、思い付くだけの悪態を吐いた。女は負けじと反論する。
人形みたく愛想無く客相手するなら良いが、最悪な事に此奴、客に暴言を吐く。
ブスに加えパァで性格悪いとか、もう逸そ死んだら楽だろうに、多額の借金をも抱えて居る事だし、男には相手されん事だし。わしが此奴なら、死ぬな。先ずまあ、其の面の時点で人前には出ん。
店長からも此れ以上面倒見れないと悲鳴を貰った。
こう云う勘違い女は、美人だろうが不細工だろうが、行き着く先は同じ。
此の女は特に酷い、先ずに顔面でわしを不愉快にさせる。
黒い壁に挟まれる黒に見える赤い絨毯、薄暗い消滅なのもあるが、完全に光を飛ばしても此の絨毯は赤ワインの様な色合いをする。だから、此の店の絨毯にした。
最初此の絨毯を見付けた時、部屋に敷こうとしたが、でも違う、此の絨毯には、似合う雰囲気がある。既に作られた部屋にでは、絨毯に申し訳無い気がした。
内装から絨毯を選んだのでは無い、絨毯に合う様、周りを作った。言わば此の店は、絨毯の為に存在して居る様な店。
天井迄の高さ、吊されるシャンデリアの形、数、光の加減、廊下の細さに長さ、ドアー……全て此の絨毯が最高に見える様計算した。わしの計算に狂いは無く、来た客は皆、其の絨毯の存在感に圧巻する。看板に匹敵する絨毯だと。
大阪歓楽街にあるSMクラブの頂点に立つ“majesty madder”。勿論、わしの最高宝から名前を貰った。
完璧な物には、完璧な名前を付けなければ為らない。生半可な名前では、此の絨毯、床と云う踏まれる場所であり乍らも此の店でもSMクラブとしても女王と君臨する絨毯には、申し訳無い。
わしは来た時、自分の為だけに作った何も無い一室で、陛下に頬擦りをする。此の質感、此の色合い、全身で知る事にはスラックスの付け根は高く為り、射精寸前である。陛下を思う存分堪能し、然し陛下に対して射精は出来ん、こんな汚れた代物、陛下に浴びせる訳にはいかん、興奮した状態で其の時暇な女を相手にする。
揺らめく赤い色、揺らめく赤い鳥、揺らめく記憶。
此の時程興奮するのは無い。何時も以上に放出される量、自分でも「あはは、よぅ出たな」と笑える。
女は、案の定黙った。ドアーを開く迄は散々喚いて居た癖に、絨毯を見た途端静かに為った。
絨毯にも劣る己の面構え。とんでもないマゾ女は、絨毯への敗北感だけで股間を濡らす。そうして屈し、キスをする。一生を此の絨毯に捧げる事を誓う。
「ふぅん。」
誰がどう見てもサディストとしか思えない面構えをする女が、組んだ足を解き、鋭利なヒールで絨毯を踏み付けた。
此奴も又、うちに借金をした馬鹿だ。
が、一つ違うのは、経営の技術がある。
見た目其の侭のサディストで、無駄な肉一つ無い長い足で全てを手中に納める。其の靴に踏まれたい、其の足に窒息させられたい、其の長くしなやかな手から振り下ろされる鞭を受けたい、其の強烈な眼光で、心を射抜いて欲しい…。
名は冷華。冷淡な華。絶対零度の中に咲く、華。
我乍ら良い名前を付けて遣った。
今夜は、日本人離れした顔付きに良く似合うミディアム丈の栗色だった。顔を揺らす度、顔より豪奢な作りするイヤリングが覗く。
冷華に、自前の毛髪は無い。今見る“髪”は、他人の毛髪で作られた代物。
自前の毛髪が無い理由は、パトロンの金を持ち逃げし様とした所見付かり、激高したパトロンに毛根迄焼き払われた。金も、髪も、パトロン迄も失せた冷華は自暴自棄に陥り、わしの所で端から返す気の無い金を借りた。借りた金は、そっくり其の侭手付かず、使って居ないのだから減る筈が無い。返済日の時半分だけ返し、「利子分は待って」「でももう少し貸して」と一年程繰り返し、利子と残金だけで結構な額に為った。そして、返済日を無視する客に為り、驚いた。
取り立てに行った部屋には大金がはら撒いてあり、冷華は其の上で寝て居た。猫の様に、つるっぱげの頭で、丸まって、全裸で。

――此れは、何や…?
――お金。其方から借りたお金。

隠す気も無く、形の良い乳房出した侭答えた。世界遺産に認定されても良い程、見た事も無い“奇麗”とだけでは、世界中の美を形容する言葉では陳腐な程の足が大金の上を流れる。泳ぐ様に動かし、付け根のうっすらとした陰毛を見せた。

――え?
――安心するのよ、お金に埋もれてると。
――ええと、返して貰ても、ええかな…?
――嫌よッ

最早猛獣に近い目でわしを睨んだ。

――絶対に、返さない…
――あー…、あっはは、あのなぁ。

精神に異常来たした女には慣れて居たが、冷華は其の何んな女よりも上回って居た。
何かの為に金が欲しいのでは無く、金其の物に執着を見せ、愛情を注ぐ。
金が欲しいから仕事をする、仕事をして居たら金が入った、冷華は其の何方でも無く、金を使うのが趣味でも、貪欲な物欲保持者でも、貢いで居る訳でも、全く無かった。
手元にあり、アーモンド型の目で眺め、鋭利な鼻で匂いを嗅ぎ、芸術的体躯で埋もれる事が、何よりも好きな女。金等、使わなければ唯の紙なのに、使われるからこそ、金と認識されるのに。
要するに、金と酷似した物であれば良いと考えたわしは、事務所に彼女を呼び付け、三時間程返済に対する意見を言い合い、帰宅させた。掏り替わった精巧な偽札に彼女は気付かず、わしは大金を取り替えした。
十年。
神戸で抗争が起こる前から、彼女と十年以上過ごして居る。不思議な女だった。其の不思議な魔性の魅力に取り付かれ、大阪に移動する時連れて来た。そうして、八年程前に此の店を任せた。
八年も良く此のクラブが持って居ると思う。飲み屋も風俗店もSMクラブさえも乱立する場所で、一度も赤字に為る事無く君臨する。陛下と云う名前に相応しい位置に、店も彼女も絨毯も微笑蓄え鎮座する。
此の店を彼女に任したのは当たりだった。
客の九割は男、女も偶に居るが、其れは其れで二重の倒錯癖を持つ。そんな奴にはもう二店舗を奨める。此処は、男共の腐り切った救い様の無い欲望を満たす場所、レズビアンの御嬢さんには其方の店舗を奨めてみる。
サディストも居ればマゾヒストも居る、ホモも居ればレズも居る、デブが好きな奴も居れば不細工が好きな奴も居る。
世の中に、需要の無い物等存在しない。無駄な物等此の世には無い。無駄の無い需要と供給の世界。
彼女はまさに、需要しか無い女。サド男も、似た様なサド男から案内受けるより女、其れも極上の女から受けた方が良い。
此の勘違い不細工女にも、需要はある。桃の様に薄く色付く胸は、見るからに柔らかそうで、大きく開いた服から零れん程に実る。
此の胸に栄える真っ赤な跡を想像した。
胸が極端に無いからと落胆する御嬢さんも居るかも知れないが、何、世の中は無駄の無い世界、安心すると良い。其れが好きな男も存在する、此処に。
「冷華。」
「又見事にひん曲がった性格持ってそうな女連れて来たわね。」
女を上から下、猛獣の瞳で検査した。
「正確。ほんまひん曲がっとる。風呂に沈めても、月平均二十の基本。股しか開かん。」
「凄いクズ、生きてる意味無いわね。」
彼女は鼻であしらない、「希望は?」とわしに向いた。
“希望”とは、月幾ら此の女に稼がせ、何れ位の期間働かせるのか……返済額を聞いたのだ。
「風呂に一年おって、其れでやっと三分の一や。」
「貴女幾ら借りたのよ。」
「二週間で利子分稼げや。」
「あらあら酷い。」
彼女は、残酷であればある程美しい顔を美しく見せる。当然女は何をするのか想像し、無理、と小さく呟いた。
一年風呂に沈めて、返済出来んクズが。
不細工に自尊心は要らない。此処迄自尊心が高いとは尊敬さえする。
黒い壁に女の顔面を押し付け、手触りの良い髪を引いた。
「痛い…」
「こんなもんや無いぞ、客は。激痛の中四つん這いで鼻フックして、自分と客の排泄物食べて、笑顔で客を崇めるんや。其れで漸く御前は金を返せるんや。嫌とか云うなや、御前が金返す道は其れしか無いねん。」
こんな不細工相手でも、其れを想像しただけで少し、少しだけだがスラックスの付け根に圧迫感を知った。
「鼻血垂れ流してても、全身排泄物塗れでも、下呂吐いても、ケツが裂けてても、終わったら笑顔で“有難う御座居ました”て云うんや。何、大丈夫や、此処に来る真正共は入れる事自体に興味は持たん。違うモン入れられるけどな。客とセックスすんが嫌なんやろ、せやから仕事せんのやったんやろ、御望み通りの場所ですよ。三ヶ月、三ヶ月できっちり返せや。」
女には、怒りで興奮してると捉えられて居るだろうが、彼女とわしにははっきり判る、性的に、涎垂らす寸前迄興奮するのを。股間は脈打つ迄勃起し、白目が充血する。
手を離すと、女は其の侭絨毯の質感を一寸太い足に教え、直ぐ様奥に居た従業員に連れて行かれた。在の中の誰かが、開店迄の時間、女を躾る。長い期間なら、徐々に上級な内容に移って行くが女には時間が無い。一番最初に付くであろう客、其処から既に上級クラス。初級飛び抜け中級クラスから躾して貰わないと、最初の客が最後の客に為る可能性がある。余りに内容が人外な為、身体がショックを覚えるのだ。
女の悲鳴が、聞こえた。此処では久し振りに聞くものだった。
「ほんなら、帰るわ。」
悲鳴から時計に目を遣った。
「二週間後に利子分を渡せば良いのね?」
「うん。」
彼女と寝た事は、一度も無い。だから彼女が本当に、見た目其の侭のサディストなのかは知らない。彼女に背いた女や従業員に罰を下す時、其れは笑顔だからサドなのだと勝手に解釈して居るに過ぎない。唯単に残酷な事が好きなのかも知れない。子供が虫を殺す事を楽しむ様に。猫が鼠を弄ぶ様に。
「誠昭。」
「ん?」
帰る背中に彼女の声が、添えられる手の様に滑った。
「陛下に御挨拶は?」
「嗚呼、せやった。」
握ったドアーノブから手を離し、其の侭二人で視線合わせた侭ゆっくり膝を曲げて行った。彼女の鋭利な赤い爪、わしの筋が通る短い爪、指先を僅かな隙間だけで対面さし、互いに土下座の体勢を取った。
先に、通った鼻筋を絨毯に向けたのは彼女だった。猫にキスする様に強く唇を押し付け、うっすら目元を赤くした。続けてわしも、唇と舌先で女王に敬愛を示した。
大人二人が土下座で絨毯にキスして居るのだから、初めて見る人間は驚くかも知れない。何方かの靴にキスをして居るなら未だしも、二人揃って対面で絨毯にキスをして居るのだから。然し、此れはわし等にとって普通な事、掃除をし様と奥から出て来た従業員も又、持って居た用具を壁に立て掛けると同じ格好をした。
皆、平伏す。
女王陛下に、膝を付く。
「陛下、嗚呼陛下、愛してるわ…」
猫が背中を地面に擦り付け快楽を知る様に、彼女も仰向けに為り絨毯を身体に擦り付けた。十年前、大金相手にそうして居た。其れが絨毯に代わった、其れだけの話。何の不思議も無い。
極上の美女が絨毯に愛撫され、極上のエクスタシィを感じる様を、わしは見下ろした。
悲鳴に重なる泣き声、極上の時間を底辺も底辺に阻害され、誠腹立ったので彼女を跨ぎ、躾られて居る部屋のドアーを開いた。直立で手を拘束され、がっくりと頭を垂れる女、服は無いも同然で、鞭の跡が服だった。
振り下ろした鞭、女の身体を流れ、鞭先が床に落ちる瞬間、わしは獣の様な唸り声を出した。
彼女の目は、微弱に痙攣して居た。細い首筋には汗が浮き、完全にイった事を知った。
「貴方の鞭の音で、イったわ…」
「大きに変態。」
股間をぐっしょり濡らすわしも、又同じ肌。
カウベルは、陛下の吐息の様に柔らかい音色で、帳簿から目を離した。
初めて見る顔、内容が内容なだけに勿論会員制、紹介で無くとも初回は遊べるが、初級プレイだけ。紹介だと中級からプレイ可能。二十回初級プレイをさせ、問題無ければクラスを上げる。受け身なら、初回でも上級可能。
真面目な風貌、店でも間違えたんじゃ無かろうか。
サディストにも、マゾヒストにも見えない。SMクラブが全くの初めての客でも、内の欲望が目に滾って居るので見極めは付く。外で幾ら欲望抑えて居ても、此処に一歩入れば欲望は剥き出す。陛下に欲望を引き摺り出される。
此の客には、其れが無い。
本当に間違えたんじゃ無かろうか。
「いらっしゃいませ。」
「え…?」
七三分けの客は、覗く額に少し汗を浮かせた。
「初めての方ですね?」
「え、ええ…」
「当店は会員制と為っておりますので、規約に御納得頂けましたら此方に御記帳下さい。御帰りの際、会員証を御渡し致します。次回からは其れを御提示下さい、御署名だけでプレイに移行します。今回はプレイ前に少し御時間頂きます。」
差し出したペンを客は握るが、規約事項書かれる書類には目を落とさない。
冷やかしだろうか。
一度視線合わすと、客は慌てて下を向いた。
客は、初っ端から上級プレイを希望するマゾヒストだった。
とんでもない変態。
最初に気付かなかったのは、成る程、相当な躾を受けて居る。
主人以外の前では、決して欲望を見せるな。
其処迄躾されて居るのに、何故。
「御希望の主人は。」
女達の写真と細かい紹介を書いたファイルを出した。
然し。
「貴女は…」
ファイルから目を離し、客を見た。
「申し訳御座居ません、ワタクシは貴方様と同じです。」
良く居る、私を相手にしたい客が。何回も繰り返した同じ言葉。云った客がサドだろうがマゾだろうが台詞は変えない。
貴方と同じ。
そう云えば済む。私は受付嬢。売り物じゃないから駄目と云ったら金でどうこうする客が居る。煩いから性癖の問題で逃げる。
落胆し切った顔。
だけど何だろう、最初に見せた驚きは、理想を目の当たりにしたと云う其れでは無い。全く違う、例えるなら幽霊でも見た様な。
「誰でも良いです、空いてる方なら。」
此の客が来た理由が判った。
満たされたいのは欲望では無く、虚無感。主人に捨てられたか何かしたのだろう。結構可愛い顔なのに勿体無い。
私が飼って遣ろうか、此の可愛子ちゃんめ。
「では、此の方を。御説明しますので彼方のソファに。」
三つあるソファ、一つに老紳士が読書しつつ順番を待って居る。彼が何方かは、想像に任せる。
「貴女が茜様?」
客は突如聞いた。
「え…?」
今度は私が面食らって仕舞った。
「いいえ、ワタクシは。」
「冷華様ですよ。」
かさりと頁を捲る音が、品の良いしっとりした声とした。
客同士で話す事は禁止にして居ない、でもだからと云って、こんな場所で友好関係築く変わり者も居ない。従業員と話す客は居るが。
此の老紳士は、事私に為ると口を開く。
黙って本を読んでろよ。
「冷華様…」
「如何遣ら彼は、私と同じ疑問を持って居る様だよ、冷華。」
「何かしら、教授。」
此の老紳士は心理学部の大学教授で、相手した女が教えて呉れた。
「マジェストリー マダー。」
店の名前だ。
「随分と学のある方ですね、貴方は。」
本に向いた侭の老紳士の言葉に客は輝かんばかりの目を向ける。
「此の八年、凡ゆる客を従業員宛らに見て来た私ですが、私と同じ疑問を持つ方に御会いしたのは初めてです。因みに貴方が冷華に見せた驚き、理由を当てましょうか。」
漸く、本から目を離した。客は黙って老紳士を凝視する。
「冷華、君は人形に見えるんだよ、心理状況が私ですら困難極める程の、感情、人情、其れ等全てが欠落した人形。彼が驚いたのは、人形が喋ったと勘違いしたから。」
「そうです…、ええそうです…ッ」
「私でも驚くよ。」
私が人形に見えるのは今に始まった事では無い。
キリキリ笑う老紳士を、危ない宗教の教祖を崇める様な目付きで見詰める客。
「貴方の主人は“茜”と云う名前ですか?」
「え…」
「冷華の疑問は私も持ったよ。」
先程散々、心理状況が読めないと云ったでは無いか。
終に来たか、教授。
「主人と同じ名前だから足を向けた、其れだけ。だから君に名前を聞いた、茜かと。」
「教授、御免為さいね、私、馬鹿なのよ、判り易く云って。」
「君は人形と同時に、此処の女王に見える。そう、陛下、にね…」
従業員が老紳士を呼びに来た。帽子を浮かせ挨拶済ますと、絨毯の上を歩いた。
「…御免為さいね、教授は何時もああなの。」
「茜様は、何処に居るんですか?」
間髪入れず客が云った。
「茜様、ねぇ。」
ちろりと視線を絨毯に落とした。
「あ、嗚呼…」
釣られて視線落とした客は理解したのか、感激に声帯を震わせた。そうして、プレイ開始を教えると、客は思う存分絨毯に平伏した。




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