神の悪戯 悪魔の宴
時期が良かった。俺は次の日から、二週間の休暇時期に入って居た。キースは相変わらず働いてるけど。
こんな姿に為って、二週間以内に戻って貰わないと困るけど、戻る術等判らない。
午前中は少し書類を纏めた。其れから、俺は休みの日はブランチだから昼寝をした。
タオルケットを掛け様としたシャギィが驚いたのは無理も無い話。ミスターとデートしてる夢を見て居たのに無理矢理起こされた、御蔭で機嫌は最悪。
「何だい…邪魔しないで呉れるかい…。主人の昼寝を妨害したって告訴するよ。」
「あ、嗚呼…、ヘンリーか…。俺も警察に連絡する所だった…」
「俺じゃ無かったらキースとでも云うのかい?俺の何処にあんな威圧感があるって?心外だ。名誉毀損で訴えて遣る。」
「女の子に見えたんだ…。だから、誰だろうって…」
そらそうだろう。平日の昼間に、マシューだって学校に行って居るのに、知らない女の子が寝て居たら驚きもする。警察にも連絡入れたく為る。
シャギィの言葉に俺の眠気は完成に飛んだ。怯え乍ら見上げると、怪訝な顔で首を捻られた。
「本当に、ヘンリーなの…?」
俺は平均身長には大分足りないから、昨日数時間、誰も気付か無かった。判る奴には判るんだなと、シャギィの愛の深さを知った。
「確かに俺何だけど、俺じゃないんだよ…」
「ふぅん。……黄色い救急車呼ぼうか?」
「いいや、結構…。俺は正常だよ…」
キースには、酷い薬中だな、リハビリ施設に送ると云われ、シャギィからは、精神病院に送ると云われた。逸そ打ち込まれて仕舞った方が、楽何じゃ無かろうか。
「精神病院に送りたかったら、送って如何ぞ…。楽に為れるかも…」
「本当にヘンリーなの?」
「其れは何とも云えない。」
「一寸待ってて、警察呼んで来る。ヘンリーそっくりな変な女の子が、支離滅裂な…」
「嗚呼、駄目…」
腕を掴んで止めた。
シャギィは困り果て、俺の横に座ると、じっと見詰めて来た。そして優しく、髪と頬を撫でた。
「名前は?何処から来たの?」
キースとは大違い。迷い子をあやす、優しい声だった。
「ハロルド・ベイリーで、家は此処です。」
「やっぱ御免、警察に。」
「駄目っ」
素早く腰を上げたシャギィに素早く掴み掛かり、何て事だ、シャギィの力に引き摺られて居る。
「此の感じは、ヘンリー何だよな。でも女の子だもんな。」
後ろから抱き着かれたシャギィは唸った。
大体、女の子女の子って俺達は繰り返すけど、俺は三十代、立派な中年。だけど、何処から何処見てもハイスクールに行ってる年齢にしか見えない。
だから御免、女の子と云わせて頂く。
「女の子に、為ったんだ…俺…」
「ふぅん。良かったね。」
嗚呼、又。其の興味無さそうな「ふぅん」。黄色い救急車を呼ぶんですね、判ります。絶対部屋から出しません。
ノブに触れる前にシャギィの手をはっ叩き、鍵のダイヤルを回した。
此のドアーの鍵は特殊で、普通の鍵とは一寸違う。勿論、普通のスライド式の鍵も上には付いてる。其の下に、ダイヤル式の鍵がある。二重ロックって奴。開く時は、違う四桁を二回入れる。此処には大事な書類を置くから、用心の為。まさかこんな時に役に立つとは思わなかったけど。
俺達以外に番号を知ってるのはクラークだけ。開ける事の出来無いシャギィは血相変え、ドアーを叩き、クラークを呼んだ。
「クラークさんっ、クラークさん開けて下さいっ。変な女の子に監禁されたっ」
「馬鹿馬鹿しい。妄想です。旦那様の御友人に、其れは優秀なドクターがいらっしゃいますので、取り次いで差し上げます。馬鹿馬鹿しい。全く馬鹿馬鹿しい。」
呼ばれたクラークはドアー越しに一言、そう云っただけで鍵を開ける事はしなかった。クラークが呆れ果てた時に云う「馬鹿馬鹿しい」、其れを三回云ったので本当に呆れて居る事が判った。
俺とシャギィ、何方が馬鹿馬鹿しい事を云って居るんだろう。
馬鹿馬鹿しくても何でも、俺が女の子に為ったのは紛れも無い事情。俺が、馬鹿馬鹿しい、って云いたい位だよ。
俺の身長は、全く変わってない。だから抱き着いても、嗚呼シャギィって本当に大きいな、とは思わない。でも大きく感じた。女の子が身体の高い男を好むのって、屹度こんな心理。幼い頃の記憶、父親の背中何だろうな。
「シャギィ、シャギィ…。君迄、拒絶しないで呉れよ…」
「拒絶はして無いよ?」
「嘘吐きだね、君は。」
「ヘンリーって認識して無いだけ。」
「其れを世間では拒絶って云うんだよ。」
「あ、そうなの?」
「知らない…」
「拒絶って云うのはさ、真向から否定する事じゃないの?」
「真向から否定してるよ、君は。まさに。」
「否定はして無いよ?」
堂々巡りの会話に飽きた。拒絶だろうが否定だろうが認識だろうが、如何でも良い。警察に連絡しないと頷いて呉れたら解放する。
シャギィは又ベッドに座り、俺が寝て居た場所に顔を埋めると「匂いはヘンリー」、そう云う変態ちっくな事はしないで貰いたい。
「だからヘンリーなのかな。」
「そうです、ヘンリーです。」
「ふぅん。」
其の「ふぅん」が、曲者何だって。判らないかな、畜生が。
「ヘンリー。」
「何?」
「横、座って?」
云われる侭俺は座り、色魔だ、シャギィは色魔だ。いや、今更か。
抱き着かれた。
「シャギィ…?」
「嗚呼、ヘンリーだ。」
抱き締めて判るのか、良く調教されてる男だよ。
「ヘンリーが女の子に為っちゃった…」
「うん。」
「ふぅん…」
背中に回って居た手は、首からゆっくりと下がり、腰から又上がって来た。ぞわぞわと身体が震え、肩を竦めた。
「此れは、此れで…、有りかな…?うん、有り。」
シャギィのスイッチは良く判らない。額にキスをし、其の間は円を描き乍ら項を触った。ぞわぞわがぞくぞくに変わって、手が痺れ、ぴったりとシャギィにくっ付いた。
「シャ、ギィ…」
「俺、女の子とも出来るけど。」
何とも魅力的な御誘いです事。
「浮気はしない主義でね。」
「浮気?違うよ、此れは。俺が抱くんだから、浮気じゃないじゃん。」
其れ、何て口説き文句だい?
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