遠征
壁に掛かる軍服、其れを琥珀は何度も撫でた。後ろから近付いた気配に全く気付かず、身体を包まれた。
「如何、しました?」
「暫くは、此れも見れないのだなと。」
「又見れます。海の修羅は、無敵なのですから。」
琥珀は笑い、軍服から手を放した。
「何て素敵な言葉なのかしら。」
「そうですか?其れは良かった。」
琥珀の身体を振り向かせ、優しく抱いた。
「ワタクシが居ない間、良い子にして待って居るのですよ。」
「あたしは何時も良い子よ。云うのはあたしの方。」
「ん?」
馨の奇麗な顔を抓り、歪ませる。
「海の男は危険だから。」
笑う馨。
「極力努めます。」
「絶対。」
「おやまあ。若さ溢るる時期に、禁欲を申しますか。拷問ですねぇ、全く全く。」
琥珀は声を出して笑い、馨の身体を抱き締めた。
「帰って来た時は、好きにして良いから。」
「ふっ。」
低く笑う馨。琥珀の膨れた下瞼を触り、艶を流す。
「今は?」
近付いた唇は、薄く笑って居る。
「仕様の無い方ね、全く全く。」
明日は早いんでしょうと、其れでも笑う琥珀の身体を簡単に持ち上げ、ベッドに静かに置いた。
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