オラニエの王国・和蘭


「其れでは陛下、行って参りますねぇ。」
ふわふわと笑っている。
現国王の次男。身体から滲み出る貴族の雰囲気は、とても軍人には見えない。
彼も母である陛下も、和蘭国民全員が此の戦争には、余り意欲的ではない。長い戦争からやっと独立し、軍はあるもの中立体制を決め、戦争はしたくなかった。然し、其れでも侵略が続き、国として危ぶまれ、仕方無く英吉利と手を組み、独逸軍に攻撃を始めた。
決めた理由。
日本が其処に居たからだ。
日本が居なければ、英吉利等と手は組まなかった。英吉利に散々迷惑を掛けられているのに、今更仲間になる等、考えも付かなかった。其れでも、此れ以上の占領は避けたいが為、中立体制を破棄し、戦争を始めた。
其れに於いて、英吉利側が幾つかの公約をした。
先ず一つは、陛下の安全保障。戦争が続けば君主である女王の命の保障さえ出来ない。其の時は必ず、英吉利に亡命させ、彼が死んでも存命させると約束した。其れと同じに、次期国王である長男の保障も。長男は戦争開始後、直ぐに英吉利に亡命したので、安心である。
二つ目は、物資。何せ戦争をする積もりも無く独逸軍の侵略が始まったので、食料も武器も取られ掛けていた。其の為、物資援助をするという理由で、攻撃を始めた。
此の二つは、如何やら英吉利側が堅く守っている。然し、最後の三つ目だけは、余り良い顔をされず、困っていた。
同盟国になるが、一切其方側に手は貸さない。
蘭軍は、侵略を防ぐ為に中立体制を破棄した。其れでも手を貸さないといったのは、他を攻撃する理由が無い為だと云う。軍を一切和蘭から動かさないという約束だが、此の間西班牙を攻撃しろと云われ、陛下が憤慨した。其れは凄い怒り様で、宥めるのに時間が掛かったが、其の憤慨具合に危機を感じた英吉利側が、約束を守った。
両国の女王も、仲が悪い。
依って、軍も仲が悪い。
兎に角、和蘭と英吉利は仲が悪いのだ。




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