ヨーゼフという名前
クラウスに初めて会ったのは、独逸に帰って来た時、俺が二十二歳で彼は十五歳の時である。
彼の父親、詰まり総統閣下はハンスと友達で、其の親友の息子、として紹介された。十五にしては人生を悟った様な顔をし、此奴大丈夫か?と疑いたくなる程の暗い印象を受けた。
確かに此の時の独逸は、英吉利に負け、ソヴィエトに負け、因縁の仏蘭西に負け、亜米利加に負け、和蘭には一応勝ったが負け通しで財政は破綻寸前、国民全員が荒んで居たと云っても過言では無いが、彼は一層荒んで居た。
そう見えたのは、実際、彼は心に酷い傷を持って居た。
二言三言言葉を交わし、彼は睨み付ける様に俺を見ると部屋に篭ってしまった。なので、彼に対する第一印象は、良いとは云えないであろう。彼も俺に対して、変な日本人、としか思っていなかったであろう。
其れが如何してこうなったか、人生とは全く不思議な物で、俺は彼と関係している。其れも、総統閣下命令で。
十五年の月日がこうさせたのか、総統閣下がそう仕組んだのかは判らない。
帰化し、新しい名前を貰ったと彼に云った時、彼とハンスは驚いた顔で「ヨーゼフ?」そう聞いた。喜んでくれると思って居ただけに二人の反応には淋しい物を感じた。
「アロイスは何を考えているんだ?」
「父さんの考え等、俺には判らないですよ。」
此れが今から十年前、彼が二十歳の頃の話になる。
彼と関係、正確には総統閣下からの命令が来たのは一年前、戦争が始まる前。彼が、元帥、と呼ばれた時期から始まる。
当然俺には妻、尚且娘迄居る。
そんな俺が何故選ばれたのか、俺には判らない。総統閣下にしか判らない。
判らない筈何だ。
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