Herrschaft-支配


未だ勝手の判らない場所を把握する様に、一人で散策していた。何故こんなにも暗い必要があるのか、基地の地下は暗い。地下なのだから暗いのは当たり前なのだが、陰湿な空気は違う暗さを侑徒に教えた。体液と云う体液が染み付いた此処は、“実験場所”である事をはっきりと示していた。
暫くすると矢張り臭いで気分が悪くなり、外の空気を吸いたいのだが、好き勝手歩いた為何処に階段があるか判らなくなった。どのドアーが階段だと手当たり次第ドアーを開けるが、見付からない。歩く事さえ出来無くなった侑徒は口を押さえ座り込んだ。
吐く、そう胃を熱くした時、悲鳴が耳を抜けた。瞬間物事が考えられなくなり、其の場に吐き出した。悲鳴を聞き乍ら吐き続け、自分が一体何処に居るのか、何故此処に居るのか理解出来無くなった。
悍ましいと云う言葉が似合う場所。人間が人間で無くなる場所が確かに存在していた。
逃げれず、悲鳴を上げ、泣き、そして死ぬ。
命はこんな物の為に存在するのか、医者の存在理由は、自分は一体。
何故、何故、何故だ。
頭には状況に対する“何故”と、“何故”に対する“何故”が存在し、自分が一体何を考えて居るのか将又考えて居ないのか、侑徒には其れさえ判らず居た。
其れは父親に支配されて居た時と全く同じ気持だった。
支配するのに理由は無い、本能だから。だったら何故、そんな本能が人間に存在するのか、侑徒は知りたかった。人間なのだから、知能があるだろうと。
アーリア人は有能なのだろう、なのに何故、其れを証明する為に本能に従う。
馬鹿みたいだ、侑徒の声は悲鳴に消された。




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