ヰロヲトコ
泣いているのかと、力無く項垂れる折の顔を龍太郎は覗き込んだ。誰の声にも反応しない折を龍太郎に預け、敬作は医務室に向かった。泣いてはいないが、唯、放けた目で床を見ている。其の目は何だが、木島が死んだ時の雪子に似ていた。
静かな廊下に声が二人分響き、漸く折は顔を上げた。
「浮…雲…」
「公、爵…」
腫れは随分と引いているが、未だ痛々しさが残る雄一の顔。折はゆっくりと立ち上がるとふらふらと雄一に近付き、其の侭雄一の腕に落ちた。
「浮雲…」
二人の姿に敬作は無い眉を上げ、厭らしく口角も上げた。
「御熱いこって。」
違う、と云いたいが、主人の帰りをずっと待っていた猫の様に折が身を預けるので、雄一は云えず居た。結われていない折の髪を触り、雄一は御免と笑った。
敬作から荷物を受け取り、龍太郎に一礼した。
「暫く、自粛したら如何だ?」
折の為に、そう龍太郎は鼻を鳴らす。
「そんな、嫌ですよ。私は此れで生きてますので。」
金の為では無く、心の為に。何度拘留され様が、木島批判だけは絶対に止めないと、雄一は顔を引き攣らせた。
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