愛妻家の朝食
間抜けな顔を晒し、片足ベッドから落ちた格好で寝て居る折を上から見た。
「折。」
二回呼んだが返事は無く、腹に足を思い切り乗せた。飛び起きた折に枕を投げられ、器用に雄一は交わした。
「浮雲さん、ちょいと頼みがあるんだ。」
其の名前に折は手を止め、態度を変えた。
「俺に用かい、公爵。」
ぞくりとする“浮雲”の色気。
「何、簡単な事さ。代筆を頼まれ無いか?」
煙草を咥え様として居た折は投げ捨て、嫌、そう返した。理由は矢張り、面倒臭いだった。
「一時間で終わる。」
「無駄な労働はしない。」
「ココアと…」
ゆったりとした雄一の声に、折の身体は反応し、ベッドから下りた。
「忘れるなよ、公爵。」
「嗚呼。」
ココアとマシュマロで容易く動く折に雄一は笑った。
そして思う。
何故、浮雲の時はきちんと身形を整えるのに、折の時は整え無いのか。今は“折”の時らしく、女物を一枚ぺろんと来て居る。帯は腰の位置で、一応前は合わさって居るがだらし無い。裸足でぺたぺた大股で歩き、裾は相変わらず床に伸びて居た。皺一つ無い足袋を履き、擦り足で歩く御前は何処に行ったんだと、雄一は泣きたくなった。
「浮雲さん。」
後ろから投げられた名前に折の足は止まり、身頃を持つと擦り足になった。
「面白い。」
「黙れ。」
「はいはい。」
ふん、と鼻鳴らし顎を上げた“浮雲さん”に雄一の笑いは止まら無かった。
「あら、御早う。今日は早いのね、………浮雲さん。」
雪子に迄からかわれた。
〔
*prev|8/12|
next#〕
T-ss