弐
抑、何故奴はあんなにも甘党であるのか謎だ。記憶では、絶縁した母親と兄さんはそうでも無い。母親は珈琲に砂糖を入れた事は無く、兄さんも又、ミルクは入れるが砂糖は入れない。折だけ、異様な程甘党だ。珈琲に大量の砂糖を入れ、蜂蜜を掛けた、好物のカステヰラを食っていた。其れを見た俺は、気分を悪くしたのは云う迄も無い。
思うに折の甘党は、祖母譲りかも知れない。祖母は甘党で、大のカステヰラ好きとして有名だったと聞く。母親曰く、牛鍋をすれば醤油辛いと、鍋に大量の砂糖を投入する。御蔭で唯々甘い肉を食わされた。豆腐が甘い等、私は知らなかった。そう云う。
カステヰラに蜂蜜を掛けたのも祖母が最初だったらしく、もう少し甘さが欲しいと云った折に、祖母の行動を思い出した母親は其の上に蜂蜜を掛けた。すると其れを気に入り、けれど無表情で其れを食べる為、果たして其れが美味いのか不味いのか、誰も確かめ様が無かった。
そしてもう一人。
在の木島の子供の中で唯一の甘党。俺達の父親、木島和臣。陸軍でも甘党四天王として知られていたと云う。因みに他三名は、本郷龍太郎(カステヰラ)、井上拓也(マシュマロ)、五十嵐直人(綿菓子)である。黒い軍服に身を包んだ奴等は暇があれば餡こ餡こと、御前達は蟻なのかと聞きたくなる程の甘党だ。
父親が最も好んだのは、チヨコレヰトだった。
寝る前に食べ、と云うよりは、食べている途中で寝ているに違いない。そう兄さんが云っていた。
「朝起こしに行くと、決まってチヨコレヰトが枕元にあってね。其れが宝石の様に魅力的で、誘惑に負けた僕は一度食べたよ。余りの甘さに後悔したけれどね。」
折がココアの魅力に取り付かれたのは、屹度父親の遺伝。作ってやろうと思ったのも、又遺伝なのかも知れない。
母親が、カステヰラに蜂蜜を掛けた時の様な、そんな気持。
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