「ねえ、新。」
甘ったるい声を女は出し、布団の上で胡座を掻き煙草を飲む新の背中に身体を寄せた。剥き出す女の肩には赤い跡が無数に散らばり、身体の至る所には新が愛した爪跡が浮き上がって居た。
「何?」
上がる紫煙の様に新は身体を揺らし、身体に流れる女の腕を見た。縛り付けた荒縄の跡が残る腕は白く、良く映える。
「もう一回…」
誘う女の顔を見、新は鼻で笑う。
「冗談でしょう?」
「二回じゃ足りませんわ。」
「身体が持たないよ。此の後、店を開けなきゃなりません。」
其れに、と煙草を消し、キッスをし乍ら女の太股を撫でた。じっとりと濡れた恥部、指に絡み付く暖かさ。上がる女の息を舌と共に飲み込んだ。
「旦那様が御帰りになる。」
「…嫌な事を、思い出させてね。」
脳裏に主人の顔が浮かんだ女は新から離れ様としたが、待ってましたと云わんばかりに女を布団に倒した。
「奥様、此の様に此処が解れておいででしたら、困りますね…?」
「新…」
止めて頂戴と女は指を噛むが、身体は反応し、退け反る。
「旦那様が、俺と同じ緊縛趣味で良かった。」
「知られてしまうものね…」
「そうですとも…」
引き抜いた指を咥え、充分に唾液を絡ますと又恥部に忍ばせた。二度の情事で恥部は軽い刺激でも反応し、未だ余韻を残す陰核は固く張った。自然と女の両足は開き、重なる新の体温に又熱が上がった。
成長過程の幼さを残す新の体臭は仄かに甘く、けれど何処か男特有の砂みたいな匂いがした。
「貴方は完全に成長したら、屹度、女を狂わせてね…」
「今でも狂ってらっしゃる。」
顔を歪ます女とは真逆に新は笑い、指を奥に沈めた。
「十七でしょう…?此れからでしてよ。良い男に、育ってよ…新…」
「奥様が育てて下さいな。」
「五年後が、楽しみでしてよ。」
甘い吐息に首筋を湿らせた新は薄く笑い、震える肩にキッスをすると指を引き抜いた。
何度、同じ台詞を無数の女達に云われたか。云われる度新は何処か虚しさを感じ、しかし、繰り返し同じ言葉を聞いた。
新が相手にするのは、全て主人を持つ、暇な金持ちの女だった。金品や見返りを求めず、唯女達との一時を求め、又相手の暇を潰した。女達には其れが都合良く、十七歳と云う若い肉体は重宝された。
「俺、天涯孤独だったら、普通に男娼になってた。」
「あら、そんな事、させなくてよ。」
「何故…?」
貴方には才能があるから。
女達は決まって新の手を愛おしそうに撫で、頬に寄せる。そして、揃って同じ台詞を二つ云う。
一つは才能。
「あたくしの、愛人にしてよ。一生離さない…」
もう一つは、才能を世に知らしめる報酬の飼い殺しだった。




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