恋をやめた理由
異常性欲で無いのは此の数ヶ月で知ったが、性欲が全く無い訳では無い。人並み、初めてそんな言葉と一緒に為った。俺は思うに、自慰と云う物を数える程しかして居なかった。一番最初に覚えたのは何時だったか、女と初めて寝る依り少し前だったか後だったか。其れさえも不明瞭で、クラスメイトが毎日自慰に耽る様に俺は女と実行して居た。
する必要が無かったと云えば簡単であろう。
そんな、仕方も大して判らず、かと云って親父に聞く訳にも今更ゆかず、正直面倒臭かった。
欲が溜まれば身体は勝手に反応見せて呉れるが、非常に面倒臭い事を知った。
女と寝るのと自慰をするの、何方が面倒かと云うと、明らかに後者であった。クラスメイトの一人、此れは途轍も無い才子で、羨ましい事に恋人が居た。俺は沢山の女と寝るが、其れは決して恋人では無かった。
彼は、前者の方が面倒と云う。
「自分でする方が面倒じゃ無い?女とする場合はさ、寝てれば済むじゃん。」
「嗚呼そうか、木島は奉仕して貰う側か。と云うか相手は皆サディスト?俺は違うよ、相手が寝てる。」
成程そんな場合もあるのかと、クラスメイトの強い目を見上げた。一重瞼の下には、野性的な目が潜んで居た。
「自慰の仕方が判らんってのもなあ…、今更…」
云ってクラスメイトは仕方を図に表して呉れたが、有難い物では無かった。
「癖ってあるからなあ…、俺のを見せて遣っても良いが、其れが果たして木島に合うとは知れんしなあ。」
「良いよ…見せなくて…」
そんな悍ましい物を見た日には、其れこそ魘されるであろう。
自慰は面倒、女とは寝れない、けれど欲はある。
如何した物かと、一通り自慰をした後、とは云っても途中で放棄したが、今更何故あんな馬鹿げた約束を一方的にして仕舞ったのか、自分を恨んだ。俺は誠の馬鹿では無いのか、嗚呼そうに違いない。全て俺を誘うユカリを見て思った。
ユカリは俺に興味示さない癖に、アランには酷く関心を示した。最初は警戒して居たアランだが、数回会う内に慣れ、甘えを見せ、決まってユカリは本から目を離した。
「糞ぅ…アランめ…。ユカリさん、俺も甘えたいのです。」
「却下します。」
何処迄もストイック、何処迄も俺を翻弄した。
生まれて初めて手に出来無い其れを、俺は眺める事しか出来無かった。地獄に咲く花は、ユカリみたいなのだろう。目の前にあるのに決して触れない、奇麗とは決して云えない姿を、眺めるだけなのだろう。
煩悩の地獄は、業火に渦巻いて居た。
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