出会い


微かに呼吸を繰り返す少女をベッドに寝かせ、他の奴等が集めて来た子供を見た。
どれも皆、窶れ、顔色が悪い。誰も何も話さず、唯怯えていた。
「御苦労。御前達はもう良いよ。」
数人の部下達に基地に帰る様指示し、拓也は子供達の顔を見ると息を吐いた。
「腹、減ってないか?」
其の言葉に子供達は頷き、拓也は笑うと大きなテーブルを置いている部屋に連れて行き、暖かい部屋の温度とテーブルに並ぶ食事に、子供達の目が輝いた。
「食べ終わったら風呂だ。俺に知らせろ。」
餓鬼状態の子供達は拓也の言葉に反応せず、無心に食事に齧り付いた。其の姿に、元気じゃねぇのと拓也は頷き、スープの入る器を持つと、寝かせている少女の横に座った。熱いタオルで顔を拭き、白いタオルは瞬く間に色を変えた。何度か洗い、本来の肌の色を漸く見えた頬を触った。
「目ぇ覚ませよ。」
其の言葉に答えるかの様に少女は小さく唸り、唇を噛んだ。しかし目は開けず、弱い呼吸を繰り返すだけだった。
「ふぁ…」
微かに開いた口から小さく声が漏れ、拓也は耳を近付けた。何か云っている様でもないので、髪を撫でた。
「判るか?」
少女は頷き、ゆっくりと目を開けた。少女の目に映る黒い眼。少しだけ開いていた目は大きく開き、其の紫の色をしっかりと拓也に教えた。
「誰…」
「心配すんな、何もしねぇよ。」
優しく笑う拓也の目に少女は安堵を見せ、鼻を突いたスープの匂いに視線をやった。
「飲めるか?」
頷き、拓也に支えられ乍ら身体を起こし、暖かい湯気を顔に感じた。身体は起きたもの、衰弱が進んだ身体に力は無く、ぐらぐらと前後左右に動く。其れを支える様に少女の身体を自分の身体に寄せ、皿を棚に乗せ、片腕で少女の肩を抱いた。小さな匙にスープを掬い、少女の口に寄せた。口に入り、飲み込む所で、行き成り液体が入って来た事に身体は拒絶を見せ、少女は激しく咳き込んだ。
「多かったか、御免な。」
口の中で唾液と混ざるであろう少量を掬い、又口の中に入れた。唾液と共に飲み込まれたのか、今度は咽なかった。湯気立っていたスープは冷え、気が遠くなりそうな程長い時間を掛け、皿を空にした。少しずつ少女の体温が上がり、冷たい手で、同じ様な体温を持つ少女の指先を握った。
「名前は?」
「ワン…」
「じゃなくて、下。」
「メイリー…」
「美麗か、良い名前だな。未だ飲むか?」
少女、美麗は首を振り、目を瞑ると寝息を立て始めた。静かに横にし、肩迄布団を掛け、食事の取り合いをしているであろう子供達の場所に戻った。




*prev|2/3|next#
T-ss