汝、琥珀
其の日娘は父親が日本を離れる事を知った。娘は泣き、孤独を全身に感じた。冷たい男冷たい顔で、行ってらっしゃい、そう冷たく云った。
娘は其処で、冷たい愛を知った。冷たい男からは、娘が望む暖かい愛は一生貰えない。
冷たい男の手は熱く、娘の手は冷たかった。
娘は望んだ。
冷たい手を。
娘の冷たい手は、暖かい手を振り払い、冷たい手を掴んだ。
娘が欲しいのは、白の軍服でも、暖かい手でも、元帥夫人の椅子でも無い。
欲しいのは、黒の軍服。
欲しいのは、冷たい手。
欲しいのは、暖かい愛。
黒でなければいけない。白であってはいけない。
黒は有罪、白は無罪。
冷たい手を持つ娘は、険しい無罪より、平穏な有罪を選んだ。
無罪の娘には、黒を。
有罪の男には、白を。
どんな罪を持とうが、白の男は無罪である。
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