父
十四歳の頃、初めて雷を落とされた。身体が引き裂かれるのでは無いかと思う程其の声は凄まじく、脳天から振り落とされる怒号に身体の細胞と云う細胞が縮み、震え上がった。
「女の顔に傷を付けるとは何事だ!」
父の怒号は畳迄震えさせ、正座する足に伝わった。
何時もの様に妹を苛めていた。荒く竹刀を叩き付けた時、飛び出ていた竹先で妹の額は切れた。ばっと血が飛び、驚いた妹は母上母上と泣き乍ら逃げた。其の時妹は母から、貴女が悪いのよ、と其れで片付けられた。妹は困惑し、やっぱり自分が悪いのかな、と首を捻り、母から手当を受けた。
しかし其れを夕飯の時知った父は聞くなり顔を真赤にし、箸を叩き付けると私の髪を鷲掴み、椅子から引き擦り落とした。
「貴様其れでも男か!女に傷を付けるとは!」
別に死んだ訳では無いから良いでは無いかと思ったが、初めて叱責された私はショックで言葉を無くした。
「貴方…」
「御前は黙っていろ!」
止めに入った母も其の声に黙り、静かに飯を食った。
「此の性根腐りが!学校には行かん、其の癖人は見下す!御前こそ見下される人間だ!」
母と同じく飯を食っていた妹も椅子から立たされ、父は肩を持つと、正座する私の頭を押さえ付けた。
「雅に謝れ。」
其の言葉に私は身体に力を入れ、反発した。
「絶対…嫌です…」
「何処迄御前は腐ってるんだ…!」
「私は悪くありません!」
ならば誰が悪い。壊れた竹刀が悪い。其れだけで血を出した妹が悪い。
「私は悪くありません!」
もう一度叫び、手を振り払うと私は家を飛び出した。
「兄上!」
「放っておけ!あんな馬鹿は!」
自分を叱る父に、憎しみさえ湧いた。
誰がこんな性根腐った人間にした、貴方だ…!
初めて私は、父に反発した。
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