愛の授業


「何で何時も引っ掻くの…?」
「引っ掻き易いから。」
貴方は私を抱える。手持ち無沙汰の私は背中を撫で上げる、爪で。
「痛いんだけど、本当…。今日は特に。」
「嗚呼、今朝鑢掛けた。」
「尖ってる…って事…?」
「尖ってない、とは云えない。」
最悪、と貴方は私をベッドに寝かす。そうして背中を見様とするけど、首が回ってない。だから教えてあげた、指先で。
「此処。」
「…んふっ」
「此処に、此処…」
「んふふ、擽ったい。」
「気持良いでしょう?」
うっひゃっひゃ、と情熱的な時間では似合わない声を出す。一度私から離れ、逃げる貴方。逃げられたら、追い掛けたく為る。
「勘弁して…っ」
「耳も擽ってあげる。」
舌先で擽ると、途端に大人しく為る。うひゃひゃ、と笑う声は掠れた声を出して、私を快楽に誘う手でシーツを握り締める。
「駄目…本当…、琥珀…」
一寸前迄は私の中に居た、貴方の其れを擽った。腰骨から腿、奇麗な宝石は虚ろに潤んで居た。
「其処に、爪は痛い…」
「でも、固く為ってるよ?」
渇いて居た指先はあっという間に濡れた。爪の間に泡が溜まって、貴方は逃げ様とする。
私から、快楽から、情熱的な時間から―――。
「琥珀のサド…っ」
「“マッド”に云われたくない。」
いいえでも少し待って。貴方って滅法マゾヒスト。私は其れを知ってる。
作り上げたボトルシップ、貴方は、其れを壊すのが一番好き。作り上げた其れを壊す時が一番好き。努力も時間も全てが消えて、其の絶望感を味わう自分とそんな自分に恍惚とする自分。
貴方ってとっても狂ってる。
クレイジーだわ。
でも嫌いじゃないの。
其れってベッドの中でも云える事。
私にイかされた自分に絶望して、恍惚とする。
何てクレイジーなの、最高よ。
「見て見て。結構出た。」
「見飽きてるよ…、一々見せなくて結構。」
ほんのり赤らむ目元で突き出された私の手を見て、のっそり起き上がる。私は其れを家鴨座りで待って居た。
全裸で、片手は精液塗れ、頭の弱い女みたい。いいえ弱いのよね、貴方のイカレた存在に、実際私はイカレてる。
「タオル要る?」
「パンに付けて食べ様か?」
「うわぁ、吐き気がする。絶対不味いよ。」
「其れって貴方の主観じゃない?」
云って私は掌を舐めた。指一本、残らずしゃぶった。
「………パン、要る?」
「要る。」
気付いて無い?貴方の唇って、パンの柔らかさ。
「最悪だ…っ」
「噎せる事無いじゃない。」
「俺、一度でもオーラルセックスを琥珀に強要した?」
「して無い。」
一寸待って、貴方何て云った?
とんだマゾヒストだわ。
「私“に”?」
「あ、いいや、一寸待って…?」
「誰に強要したの?」
「誰にもしてないけど…」
「良いけど?しても。美人?」
「嗚呼、嘘でしょう。機嫌直してよ…」
貴方って本当、狂ってる。其処はしっかり、機嫌直ってる。隠して弁解図っても、貴方は満足するの?
違うでしょう。
愛は駆け引きよ、代償は?
情熱的な快楽よ。
貴方の背中に残る爪跡が、其れを知らせてるわ。




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