熟れた罪


随分と長居をしてしまった。
気が付けば、日は陰り始め、辺りを暗くし始めていた。
「こんな遅く迄済みません。御迷惑御掛けして、本当に、感謝しております。」
私は頭を下げ、途中迄送ってくれるという馬車に乗り込んだ。
婦人は窓に手を合わせ、そっと笑った。
「何時でも遊びにいらして。子供達も、待っております。木島の家と云えば、送って下さいますわ。」
私は、笑った。
其れが、私と彼女の、御互いにとって最初で最後の出会いだった。




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