熟れた罪


「もう大丈夫ですよ。御子さんは、無事です。奇跡ですよ。」
医者は笑って、部屋から出て行った。
溜息が聞こえる。私のではなく、彼女の。
「もう。心配掛けないで頂戴よ。心臓が止まるかと。」
「御免為さい。」
「其れで。」
厳しい声。
「相手は誰なの。」
一番聞かれたくない事を聞かれ、私は布団を被った。
「貴女ね、子供が一人で出来る物じゃないの、判ってるでしょう。誰なの。私が、びしっと云ってやる。」
私は無言で、首を振った。
「云い難い相手ね。」
無言が続く。
「云い為さい。」
「嫌。」
「強情な子ね。」
「そうよ。」
私は布団から顔を出し、彼女を睨み付けた。
「まさか、貴女。龍太郎が相手、何て冗談云わないわよね。」
「其れは絶対無い事だわ、小母様。安心して。龍太郎ちゃんは好みじゃないもの。」
「云ってくれたわね。顔は良い方よ。」
彼女は息を吐き、少しばかりの安堵を示した。
私は舌を出して、笑ってみせたが、正直、奇跡何て要らなかった。此の侭流れてしまえば、私は、単なる事故で、片付けてしまえた。
何処迄。何処迄重いのだろうか、此の罰は。




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