熟れた罪


重い、重力に従う音。
「姉、さん。」
ぞくりと背中に、悪寒が走る。
何度問いかけても答えは無く、信じられない程早く心臓が鳴る。
「姉さん。姉さん―――。ねえ、聞こえてるの。」
ノブを幾ら激しく動かしても開きはせず、力が無くなった。
「嘘だろ、姉さん。」
白くなってゆく頭の中で、目に留まった、銃。其れを手に取り、ノブ目掛け引き金を引いた。
響く銃声。
やっとの思いで開けた其処には、変わり果てた、彼女の姿があった。人間にこれ程迄血があるのかと思う程、大量の血の海に蹲る彼女。
俺は声を無くし、彼女に近付いた。刺された筈の足が、痛くも無い。
力が無くなった彼女を抱き締め、何度も呼んだ。
呼んでも、何度呼んでも彼女は答えず、残りの血を流してゆく。
「姉さん―――。」
夢でも見ている気分がした。
さっき迄、笑っていた。笑って、俺を触って、囁いて、其れなのに。
受け止められない現実に、泣く事も忘れ、放心していた。
全て、全て失った。
生きる意味も、希望も、彼女も、何もかも。
残されたのは、孤独と、絶望だった。




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