02

さて、日本にやってきて1週間が経ち。私達…いや、私は相棒によって未だとある高層マンションの一室に缶詰め状態にされていた。マグがセキュリティには念をと、都内でも有数の超高級マンションを選択しようとする中、なるべく一般人的な生活をしたい私は説得し続けてセキュリティがそこそこ整えられているちょっとお高めの高層マンションにしてもらったのはよかったのだが。

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【では、条件を呑むにあたってこちらから1つ…これから1週間、この部屋から外出しないと約束してください】
【】
「……はい?」
【…1週間、外出禁止です。1週間分の食料は今こちらで代行サービスに注文いたしましたので】
「」

そうマグノリアを丸め込んで数日後、ホテル住まいからアパート暮らしへとチェンジしたのである。

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「(あ〜〜〜、やっぱり、こじんまりしたこの部屋のサイズ最高っ!!!)」

まあ、他意はあったのだけど。…本当はこっちが本音だとは相棒には言えまい。

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ネオンが漆黒の空に輝く夜。人の気配もなく街灯も少ないとある場所に人影が1つ。物陰に隠れ、誰もいないことを確認したその人影は懐にしまっていた携帯電話を取り出す。

「もしもし−−」

人影の正体−−黒の組織の一員、そして黒の組織に潜入しているCIA局員である水無怜奈、もといキールはひっそりと、けれど透き通った声で電話の相手に向かって話し始めた。

「黒の組織がある人間を追ってるわ。−−コードネームは“ストレガ”。数カ月前に組織から抜け出した組織でも有名な技術者よ。組織だけじゃなく各国の諜報機関も必死になって探しているようだけど…未だに発見できていないわ。組織内部では日本に入国したって情報が入り込んでからジン達も行方を追ってるみたい」

「それじゃあ、」と電話を切り終えたキールはふと思い出した。
この真っ黒な組織には似合わない…閉じ込められた広い部屋の中で自由を渇望する彼女の笑顔を。

02.世界はきみのもの
Title by moss.