「あ、博士見てください」
「ん?どれどれ」
私は名無子ととある町に来ている。
メガシンカに関して更なる情報を集める為に、時折こうして各町を巡っていた。
私は普段外へ出ることがあまりない。
デートだって、研究がある私と、ポケモントレーナーとして活躍する彼女ではそんな時間はそうそうとれない。
もしかして彼女にはつらい思いをさせてるんじゃないかと、今回の調査で同行を誘ったのだった。
彼女は一瞬驚いた顔をしたがすぐにぱあっと顔を明るくし「はい」と元気良く返事をしてくれた。
「ふむ」
「何かわかりました?」
「いいや、全く」
「プラターヌ博士は本当にポケモン博士ですか」
「勿論だよ!」と言うと怪しむような目で見られた。本当のことを言ったはずなのだが。
「とりあえず今日は帰ろうか」
「わかりました」
時刻は夕方の五時。
そろそろ空が暗くなり始める時間だ。彼女を危険な目にあわせたくはない。
彼女はモンスターボールからよく懐いたファイアローを出した。
「博士、なんか落ち込んでません?」
「あはは、君にはなんでもお見通しか……はっ、もしかして!」
「特性おみとおしとかふざけたこと言わないでくださいよ」
「冗談だよ」
私が笑顔で言うと、彼女は真顔で「当たり前です」と返した。
「ほら!博士」
彼女は目の前に来ると私の両手をとった。その手はとても温かい。
「元気出してください。それくらいで落ち込んでどうするんですか。私が好きな、自慢の博士ですよ。わからないことなんてありませんし、わからないことが一つや二つあったところで、めげるような博士じゃ、ありま、せん……」
恥ずかしさからなのか、次第に小さくなっていく声。顔はうつむいていてしまってよく見えないが、きっと真っ赤だろう。
ああ、周りに人がいなければ今すぐ抱きしめてキスをしたのに。
彼女は本当に可愛いと思う。私にはもったいないと、何度思ったことか。
純粋で、少し照れ屋だけど、真っ直ぐな彼女の言葉は私の心に直接届く。
「うん、ボク頑張るよ。名無子、応援よろしく!」
「はいはい。あんまり調子に乗らないでくださいね」