いつものように博士に呼ばれた私。特に目的もなくルリと歩いていただけというのもあって、呼ばれてすぐに研究所に飛んできた。「素直に言うことを聞くなんて珍しい」と博士は驚いていたが、正直私に対して失礼だと思う。
一応、図鑑を見てもらったが、こちらもまたいつものように「頑張ってるね」と博士は言った。それ以上は望んでいないので別にかまわないが、たまには違う評価も聞いてみたい。ポケモンに関してのアドバイスとか。色々と。

「で、これから何を買いに行くんですか?」
そして今、私と博士は研究所から抜け出して徒歩五分もかからない場所にあるポケモンセンターへと向かっていた。
「えーと、傷薬が減っていたから買い足しに。それと、モンスターボールをとにかく沢山!」
両手を大きく広げてジェスチャー付きで説明する博士。子供のようにはしゃぐ姿は、どこか可愛かった。
「何か捕まえに行くんですか?」
「そうそう。さすが名無子、やっぱりチャンピオンは違うねー!」
「駆け出しのトレーナーでもわかるような気がしま……っくしゅ」
突然、びゅう、と冷たい風が強く吹いた。反射的にくしゃみが出る。
今日の服装はワンピース一枚。サーモンピンク色の生地に、胸元に飾られた大きな白いリボンが好きでよく着ているが、今のミアレシティの天気にはあまり相応しくないようだ。ここに来る前は温暖な気候の場所にいたせいか、気が付かなかった。
お店の中は寒くないだろうし、フィッティングルームで着替えればいいか。なんて、呑気に考えていると突然肩に何かが触れた。
「こんなのしかないけど、少しはマシかな?」
心配そうな表情で私を見つめる博士。肩にかかった重みに触れ確かめると、博士が普段着ている白衣だとわかった。
「コートでも持ってくればよかったね」と、紺色のシャツ一枚になった博士がへらへらと笑う。
決して綺麗とは言えない使い古した白衣は、私が普段着ている服よりずっと大きく、すっぽりと身体を包むことができた。それは温もりがあって、確かに暖かいのだけれど。
「博士は寒くないんですか?」
「ん?ボクは平気だよ!」
「……そうは見えないですけど」
白衣を脱いだ博士は紺色のシャツ一枚だ。第二ボタンまで外して肌が露出しているし、見ているこちらが震えそうな姿をしていた。
「大丈夫、大丈夫!たまにはかっこいいところ見せたい、っくし」
「言ってるそばからくしゃみしてるじゃないですか。やっぱりこれ、お返しします」
「そう?結構似合ってたのに」
肩に乗せられただけの白衣を右手で掴み、博士の目の前に差し出すと、意外にも返された白衣を大人しく受け取り再び羽織った。

「じゃあこうしよう」
子供のように無邪気に笑った博士。こういう笑顔をする時の博士は大抵私にとってよくないことを企んでいる。案の定、博士は私の肩を抱き自分の身体にぴたりとくっつけ歩きはじめた。恥ずかしいが、それ以前に歩きにくい。

「博士、離してください」
「またまた〜、大丈夫。わかってるよ。名無子は照れ屋なんだよね」
「違います!」

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