「もし明日世界が終わっちゃうとしたら、どうする?」
「随分急な質問だね」
ソファの上でゆったりと雑誌を読んでいた辰也さん。
読んでいたものを閉じて、机の上に置くとこちらを見て静かな声で言った。
「明日で世界が終わるとしたら、いつもと同じように過ごしたいかな」
「どうして?」
あまりにもあっさりすぎる答えに、訊いた私が驚いてしまった。
「朝起きて、歯を磨いて、仕事をしたら家に帰ってくる。夜は名無子が作ってくれる美味しいごはんを食べて、シャワーを浴びて綺麗になったら、あたたかい布団で君にキスしながら眠る」
「それだといつもとあんまり変わらないよ」
辰也さんは「うーん」と唸った。
「名無子が当たり前のように隣にいるこの日常こそが、一番幸せだと感じるから」
「終わってしまう直前まで名無子と時間を共にしたいな」と、言った。
「辰也さんって……」
「ん?」
「なんでもない」
歯の浮くようなセリフを真顔で言って似合うのは、多分王子様か辰也さんくらいだと思う。
「名無子は、もし明日世界が終わるならどうするの?」
「私は」
「名無子も同じことを考えてた。当たり?」
まだ何も言っていないのに、辰也さんは私の代わりに答えて勝手に決めつけてしまう。
「……はずれ」
「それは残念だな」
そう言って笑う辰也さんはきっとわかっている。
今の言葉が嘘なのも、さっきの言葉が当たっているのも。