秒針の音が規則正しく響く。
その音は普段より大きく聞こえる気がした。
いつもならこの時間は既にベッドの中だ。
それでも私は襲い来る睡魔を跳ね除け、今か今かとその時が来るのをじっと待っていた。
自室のベッドの上で何故か体育座り。手には携帯電話。
今の私の姿を他の人に見られたら、きっと変な目で見られるだろう。
けれど、私は至って真剣である。
私には寝てはいけない理由があった。
「迷惑じゃなければいいんだけど」
手に持っている携帯電話で時間を確認する。
あと五分で今日が終わろうとしていた。
「そろそろいいかな」
番号は見なくても指が覚えている。
全てを入力し通話ボタンを押した。
「もしもし」
それは聞きなれた声。
私の大好きな声。
「氷室さん!こんばんは」
「こんばんは、名無子。まだ起きてたんだね」
「ごめんねこんな夜遅くに。今大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。今はバスケのことを考えていたところ。今週の土曜日練習試合があるからね。それで、どうかしたの?」
氷室さんは気付いているのかいないのか、その様子はいつもと何も変わらない。
「えっと、三十日が何の日だか知ってる?」
「ん……?何の日だろう。わからないな。ハロウィーンは、明日だし」
どうやら気付いていないみたいだ。
他人のことには割りと敏感で直ぐに気がつくのに。
自分のことになると、何故こうも盲目なんだろう。
「ふふ、あのね氷室さん。今日はね……」
説明すると、氷室さんは「そういえば」と思い出したように呟いた。
「一番最初に言いたかったの」
「誕生日、おめでとう!」
大好きな大好きなあなたに。
生まれてきてくれて、ありがとう。