ここでの家事はそれぞれ分担して行っている。
掃除は私が。日中動けるドッピオ君は洗濯と買い物を。
食事は「好きだから」という理由で吉良さんが作ってくれていた。
その吉良さんから、今日は帰りが遅くなるから代わりに作ってくれないか?と、私が会社から帰る午後五時丁度にメールが届いた。
「了解です」と返信をした後、家に電話をかけてドッピオ君に冷蔵庫の中身を確認してもらった。
「名無子さんの料理楽しみです!」
台所に立つ私の隣で、ドッピオ君が嬉しそうに言った。
「ありがとう。今日はハンバーグにするつもりだよ」
「わあ!久しぶりのお肉ですね!」
なんとも涙が零れそうになる言葉だがこれは本当で、貧乏(しかも大家族)だと、材料費が高くつく料理がなかなか作れない。
ドッピオ君に電話をした後、給料が入ったばかりの私は心も懐にも余裕があったせいか、偶の贅沢くらいいいだろうと家の近くのスーパーでひき肉を買ってきたのだった。(夕方のセール品だが)
「ぼくにも何か手伝わせてください!」
腕をまくってやる気に満ちた顔のドッピオ君。なんて優しいんだろうか。部屋でごろごろとテレビを見ている人外共とは大違いだ。
他の人間は、というと。ディエゴ君は少し前に帰ってきてお風呂に入っている。プッチさんは疲れているのかDIOさんの棺に入ってお休み中だ。悩める人々の相談を受ける神父さんは色々と心労が溜まるのかもしれない。何故棺で寝ているのか気になるけど、これには深く突っ込まないでおく。
「それじゃあドッピオ君にはサラダを作ってもらおうかな。野菜を切って盛るだけだから簡単だし」
「野菜は冷蔵庫か?」
おかしい。今、ドスの効いた低い声が聞こえた。
まさかな、と半信半疑で顔を向ける。だって台所だよ?死に至る道具がそこかしこにあるのに。自分から死亡フラグを立てるようなものだ。
節電と大きく書かれた紙が貼られた扉を無闇に開け閉めするディアボロさんと目が合うと、彼は偉そうに私を鼻で笑った。
「手伝ってやる」
先程まで隣で張り切っていた天使は、いつの間にかピンクの悪魔に切り替わってしまっていた。
「……チェンジで」
「変な店みたいに言うのをやめろ!」
「それで、結局ディアボロは何回死んだんだ?」
吉良さんがサラダを小皿へとりわけながら言った。
「オレは一回も死んでないぞ!」
「なんだと?」
「名無子が助けてくれたからな」
何故か偉そうに言うディアボロさん。
「…………そうか。それはさぞ大変だっただろうに。お疲れ様、名無子」
ポンポン、と労わるように優しく頭を撫でてくれる吉良さん。普段から苦労させられているから、私の気持ちがよくわかるよと言ってくれた。
「ううっ、吉良さんならわかってくれると思ってました。もう本当にすっごい大変だったんです。何度殴ってやろうかと思ったことか」
「名無子!?」
目の前で死なれたらたまったもんじゃないので、ディアボロさんが死にかける度に必死に回避させていた私はおかげでへとへとだ。昔見た、死の運命から必死に逃げる映画の主人公になった気分だった。
「おい名無子、このDIOの食事は?」
「ディアボロさんの血なら吸っていいですよ」
「やったのだ!」
「待てカーズ!貴様の餌は吸血鬼ではないのか!?俺は関係ないだろ!」
「腹に入ればよかろうなのだ!」
「うわあああああ」
聞き慣れたディアボロさんの断末魔が部屋に響き渡る中、ディエゴ君がハンバーグを一口含む。
「美味い」
「ほんと?実は少し焼き過ぎちゃったんだよね。でも、ありがとう!」
「帰りが遅くなる時はまた名無子に頼んでもいいかな?」
「もちろんです!」
「待って名無子、助けっ……助けてえええ」
(家族で15題/TOY様)