「私一人で十分だよ!」
「いやいや、名無子ちゃんだけで行かせらんないって」
「でも……」
「窓の外見てみなって。みんなマフラーしてコート着てんじゃん。名無子ちゃんにこの寒い中制服だけでおしるこ買いに行かせるなんて、それで風邪引いちゃったらどうすんの。俺悲しいって」
秀徳高校の昼休み。購買へパンを買いに行く生徒。教室で弁当を広げている生徒がいる中で、先ほどから教室の角にて繰り広げられているこの光景は、男子が女子に風邪を引いてはいけないと身体を気遣っている様にしか見えない。
しかしそれはあくまで客観的な意見である。

「そんなこと言って、また高尾君は緑間君にいいところを見せようとしてるんでしょ。そうはさせないから!」
「あちゃ〜、やっぱばれてた?ま、それなら話は早い。いい加減諦めて俺に譲ってよ」
「やだ!」
大声で言い合う二人に挟まれた緑間は至極だるそうに、深くため息を吐いた。
「もういい。お前達に頼んだ俺が馬鹿だったのだよ」
身体にくらべると小さく見える椅子を引き腰を浮かした緑間。手には財布を握りしめ、視線を二人と合わせないように伏し目がちに教室から出た。
「待ってー!駄目ええええええ」
教室の後ろの扉から出て行った緑間を追いかけ、その首を力いっぱい両手で握りしめた名無子。
「うっ!?く、首が……しまる、はな、せ……!」
「あ、ごめん!」緑間のうめき声を聞きやっと気がついた名無子がぱっと手を放す。それと同時に緑間は肺いっぱいに空気を送り込み大きく息をした。
「お前は、俺を殺す気か……」と(割と本気で)怒りを込めて名無子を見た。名無子が「ごめん」と謝るその後ろに見えた高尾は、何故か嬉しそうに笑っていた。
「真ちゃん、そんな慌てなくても、おしるこなら買って来てやるって」
「もう待ってられん。俺が自分で行くのだよ。くだらん喧嘩で俺の貴重な時間を奪われては困る」
「ただでさえ俺は人事を尽くさねばなるまい」と、通常通りだがわけのわからないことを言い、緑間は再び廊下を歩きだした。目的地へと向かう緑間を追って、高尾と名無子も歩き出した。

「真ちゃんから奪っていいのは唇だけだもんな」
「やめろ高尾。黙らないと撃つ」
「えっ、羨ましい!私も撃って!」
「名無子は何を言ってるのだよ……」

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