「ああ……いいね。とても上手だよ、名無子。いい……フフ。そこだよ、そこ……はぁ」
「…………」
ありのまま今起きていることを話すと、私は吉良さんに耳かきをしている。何を言ってるのかわからないと思うが、どうかわかって欲しい。
「どうしたんだい?まさか、私のフェチを知っているから黙っているのか?本当に優しいな、君は」
「違います。声も出せないほどドン引きしてるんですよ」
猫ちゃんのチャームがついた竹の耳かきを動かす度に、気持ち悪い声を連発する吉良さん。
いつもお世話になっているので、たまにはして欲しい事あったら言ってください!なんて言ってしまった数分前の自分を恨んだ。
「結果的に同じだから構わないよ」
「強いですね」
「それはどうも」
「一応言わせて貰いますけど、褒めてはないですからね」
どんなにドン引きしようと関係ないらしく、吉良さんは私の膝に頭を乗せて、とても気持ちよさそうな表情をしている。
その後は特に会話はなく(吉良さんのなんとも言えない溜息はしばらく続いたけど)静かな時間だけが過ぎていく。
騒がしさの頂点にも立つカーズさんは外出中だし、プッチさんも朝からいない。ドッピオ君とディエゴ君は二人で夕飯の買い物に行ってくれている。いつも静かだと嬉しいんだけどな、と最後の厄介な人物が眠る棺に目をやった。
吉良さんの表情をチラリと覗き込む。警戒心はどこへやら。眉間の皺は消え、瞼も落として、規則正しく呼吸をしていた。まさかこの人、このまま寝るつもりじゃないだろうな。リラックスしている吉良さんには少々申し訳ないが、このままでは終わるタイミングを逃してしまう。足も痺れてきたし、もういいだろう、と手を止めた。
「吉良さん、そろそろ」
「終わりにしますよ」と告げるよりも早く、部屋の隅に置かれた棺の蓋が開いた。
「なにをしている?」
寝起きが原因なのかはわからないが、DIOさんは少し不機嫌そうに見えた。
「なにって、耳かきです」
「このDIOも混ぜろ」
「もう終わりなんで」
私の発言に反応したのは、意外にもDIOさんではなく吉良さんだった。
「もう終わりなんて聞いていないが。まだ足りないんじゃあないか?」
「もう十分綺麗ですよ。これ以上掃除したら鼓膜が破れちゃいます」
「鼓膜くらい破いていいよ。少し血が出るくらいなら許容範囲だ」
「私の許容範囲を超えるんですけど」
私と吉良さんの攻防を横でじっと見ていたDIOさんは、何か思いついたのか悪戯っぽく笑い「いい考えがある」と私の真向かいに座った。こういう時のDIOさんは大抵悪いことを考えてる。というか、DIOさんが良いことをした日なんて今までにあっただろうか?いや、ない。あんなに渋っていた吉良さんも危険を感じたのか身体を起こした。
「吉良さんも起きたことだし、私もこれで……」
吉良さんに続いて私も立ち上がった。はずだった。
「…………あれ?」
絶対に立っていたはずなのに、何故か再び正座をしている。まるで時間が巻き戻されたみたい。しかし、先ほどと違うことが一つだけ。
「さあ、やれ」
目を輝かせて私の膝の上に頭を預けるDIOさん。
全く、ここの住人はどうしてこうもワガママな人ばかりなんだ。
DIOさんに転がっていた耳かきを渡されたので、これでもくらえと思いっきり頬に刺してやった。
(家族で15題/TOY様)